「外国人労働者≠移民」とする日本が陥る罠の怖さ 「現在バイアス」「フレーミング」がもたらす影響

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日本で働いている外国人労働者の大半は、国際的な定義では移民になる。移民を受け入れずに収縮していく日本、という大方のイメージとはうらはらに日本社会は定住外国人という名称で移民を旺盛に受け入れ急速に変わりつつあった。日本は事実上、大規模な移民受け入れ国に変貌し、移民は、コンビニ、漁船、建築現場、その他のさまざまな職場で働いている。

下の図は社人研(平成29年推計)のなかにある、代替的な仮定のもとでの人口動態推計を示している。

(外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

よく知られている標準シナリオよりも、ほとんど引用されない外国人移動25万人の軌跡のほうがコロナ前の趨勢に近く、その延長線上の総人口、人口構成の将来像は標準シナリオとは大きく異なる。外国人の流入超過がさらに加速し、年間50万人程度になれば、老年人口比率がほとんど上昇しない状態にすらなる。

このような人口動態の変化は潜在成長率を高め、「自然利子率」を引き上げる方向に作用する。自然利子率が上昇することは金融政策の有効性を高めることに直結する。

日本政府が使った「定住外国人」というフレーミング

では、移民をどんどん増やすべきだろうか。そうは言い切れない。移民受け入れの社会的影響がフレーミング(表現や選択肢の見せ方)に大きく左右され、長期的な社会的デメリットが短期的な経済的メリットを上回る可能性があるからだ。

政府はさまざまな分野での人手不足に対応し、2018年に出入国管理及び難民認定法を改正し、それまで高度人材に限定していた移民政策を事実上転換した。

しかし、安倍首相は2018年10月29日の衆議院本会議で、この改正案について「政府としては、いわゆる移民政策をとることは考えておりません」と述べ、受け入れ拡大は「深刻な人手不足に対応するため、……即戦力となる外国人材を、期限を付して我が国に受け入れようとするもの」と説明して、移民政策との違いを強調した。

この説明は「移民は引き続き封印するが労働力不足は定住外国人で埋める」というフレーミングにより外国人労働者の受け入れ拡大を求める人手不足企業の希望をかなえる一方、日本への移民が増えることに対する保守層の強い拒絶反応を緩和しようとした、と考えられる。

事実上の移民をあくまで(一時的に日本に暮らす)定住外国人と呼ぶ。このフレーミングは、入管法改正への反対論の盛り上がりを抑えるうえで一定の効果を上げたはずだ。しかし、長期的には社会に大きな悪影響をもたらす可能性が高い。

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