コロナ後遺症を引き起こす「4つの因子」の正体 初の科学研究で対処の方向性が見えてきた

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新型コロナ患者を追跡した研究によって、後遺症の予測に役立ちそうな生物学的な因子が特定された(写真:Saul Martinez/The New York Times)

新型コロナウイルス感染症の後遺症にはまだ謎が多いが、その1つに「後遺症になりやすいタイプはあるのか」というものがある。身体・神経的および認知的な症状が何カ月も続く可能性が高い人はいるのだろうか。新型コロナ感染症と診断された200人以上の患者を2~3カ月間追跡した研究によると、後遺症の予測に役立ちそうな生物学的な因子を特定できたという。

医学・生化学系の学術誌『Cell(セル)』に1月25日に掲載された論文が挙げた因子は4つ。後遺症リスクの増大と関連しているとみられる因子で、感染初期に特定することが可能だ。

予防・治療法への第一歩

感染初期に重症化するかどうかにかかわらず、これらの因子と後遺症(医学的には「COVID-19急性期後の後遺症=PASC」と呼ばれる)との関連性が確認できたという。論文の筆者は、コロナ後遺症の部分的な予防・治療法を示唆する可能性のある研究結果だとしている。具体的には、感染症と診断された直後に抗ウイルス薬を投与する方法などが考えられる。

「コロナ後遺症の生物学的な仕組みを解明する初の本格的な試みだ」。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部のスティーブン・ディークス教授(今回の研究には非関与)は、研究をそう評価した。ディークス氏ら専門家のほか、論文の筆者も、今回の研究結果は予備的なものであり、さらに多くの研究を要すると冷静な対応を促している。

それでも、ディークス氏はこう話す。「大きな因子が4つ特定された。いずれも生物学的に説得力があり、ほかの研究者の説とも矛盾しない。さらに重要なのは、これらが対処可能な因子であるという点だ。対処の方向性が確定すれば、私たち臨床医は症状の改善に向けて治療法の設計に取りかかれる。この点がポイントだ」。

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