コロナ後遺症を引き起こす「4つの因子」の正体 初の科学研究で対処の方向性が見えてきた
今回特定された4つの因子の1つ目は、感染初期における血液中のコロナウイルスRNA量だ。これはウイルス量の指標となる。2つ目は、特定の自己抗体の存在だ。自己抗体とは体内の組織を誤って攻撃する抗体で、狼瘡(ろうそう)や関節リウマチといった疾患にも見られる。3つ目がEBウイルスの再活性化。EBウイルスは、ほとんどの人が若い時期に感染するもので、通常は不活性となる。
そして4つ目が2型糖尿病だ。ただ、論文の筆者を含む専門家は、調査する患者数を増やした場合、糖尿病以外にも後遺症リスクを高める医学的条件はほかにも見つかる可能性があると述べている。
95%の患者に何らかの要因が当てはまる
研究の責任者で、シアトルにある非営利の生物医学研究所、インスティチュート・フォー・システムズバイオロジーの所長を務めるジム・ヒース氏は次のように語る。「この研究は、疾病経過の初期に測定を実施して患者の治療法を確立することの重要性を示している。測定したデータの使い道がよくわかっていなかったとしても、だ」。
「何かを測定できれば、それに対して何らかの対処を始めることができるかもしれない」とヒース氏は言う。
「患者が医師に『いつも疲れている』と訴えたとしよう。そのような症状を伝えても、医師からは十分に睡眠をとるようにと言われるだけで、たいした助けとはならない。こうした状況を踏まえて行ったのが今回の研究だ。定量化する方法を見つけ、実際に患者には何らかの異常があることを示したかった」
研究は複数の部分から構成され、いくつかの大学や機関に所属する数十人の研究者が参加。倦怠感や頭に霧がかかったようになるブレインフォグ、息切れなど、コロナ後遺症の約20の症状について調査を行い、さらに電子カルテで裏付けを取った。
ヒース氏によると、その結果、37%の患者で3つ以上の後遺症が2〜3カ月続き、24%が1つか2つの症状を訴え、39%は無症状だった。そして3つ以上の症状があった患者の95%には、新型コロナと診断された段階で前述の4つの因子が1つ以上見られた。