ファンド傘下で出直しのすかいらーく、脱創業者経営への試練《新しい経営の形》


 ファンドが谷を後任に選んだ理由は、当然といえば当然の、業績見通しを論理的に語れる人だったことだ。内部の幹部人材約10名を面接した永松は、谷を「唯一、客観的にグループ経営を俯瞰でき、全体の数値管理が行える人材だった」と評価する。

谷は、内の論理を優先する本体、主要子会社とは違う、合弁会社という外の空気に触れていた。改善目標を明確に設定し、不振店のテコ入れを実行してきた希有な存在だった。それは裏を返せば、存亡の危機に際し会社の方向性を的確に示せる人材が、本体では枯渇していたということ。「右肩上がりの感覚でしかものを考えられず、成長が止まったときに対処できる人材は、横川家に近い人間には皆無だった」(永松社長)現実をいみじくも露呈している。

谷にとって、経営会議や予算策定の場におけるファンドからの質問一つひとつが「斬新で刺激的」と言う。売り上げを上げるために出店することしか頭にない社員は「なぜその業態なんだ。どんな数字を立てているんだ」と問われても答えられない。創業者時代には求められなかった、市場縮小時代の対応策。谷と同じく、“外の空気”がすかいらーくの社員たちを鍛え直そうとしている。

小規模業態から学び専門店の強化に本腰

トップのドラスチックな意識変革が、現場にも伝播し始めた。
 業態の約半分を占めるまでになった「ガスト」に次ぐ柱として育てようとしているのが、ステーキ、焼き肉、回転ずしといった専門店群だ。外食が一般化した今、もはや“週末は家族でファミレス”という時代ではない。あの店であの料理が食べたいという、明確な目的意識を持った顧客を引き寄せる業態が必要だ。そうした専門店作りに、現場は全社横断的に動いている。

たとえば、“肉”を共通項とした専門店「ステーキガスト」と「旨っカルビ」。牛肉を米国で直接購買できる人材を得、そこで使わなかった端材を「ガスト」「ジョナサン」など他業態で使う仕組みができた。これにより特定業態専用の食材は減り、原価を低減できる。横の情報が遮断されていた、かつてのカンパニー制では実現しえなかった施策だ。

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