「1億円空き巣」ストリートビュー悪用の怖い実態 規制やぼかしが根本的な犯罪抑止にならない訳
ただ、規制が即、犯罪抑止につながるとは簡単には言い切れないようだ。
「ストリートビューで空き巣や路上犯罪者が目をつけた家や場所は、現実世界でも犯罪者に狙われやすい場所なのです。ストリートビューに規制をかけても、犯罪者は狙いを定める方法を現実世界に移すだけです。根本的な解決にはなり得ません」
そう指摘するのは、数多くの犯罪を分析し、知見に基づいた防犯指導を行なっている立正大の小宮信夫教授(犯罪学)だ。
コロナ禍で対面の機会が減って以降、小宮教授はオンラインでの防犯講習も行っているが、その際はストリートビューを活用している。今回の男のような「犯罪者の視点」に立って、狙われやすい場所を指南している。
「景色解読力」を意識しよう!
「空き巣や路上犯罪者にはその人の性格によらず、一定の行動パターンがあります。彼らはその家や場所だけではなく、周囲の様子も含めた『景色』を見て、犯行のターゲットを定めているのです。やみくもに犯行に及んでいるのではなく、成功するか否かをしっかり見極めています」
景色とは、どのようなものか。小宮教授の指摘するポイントは2つだ。
「入りやすいか入りにくいか」「見えやすいか見えにくいか」
犯罪者は景色から「入りやすくて見えにくい」と判断すれば、犯行に及ぶ。つまり、侵入が簡単ですぐに逃げられる。さらに周囲の目が届かず、犯行に時間をかけられるという条件が整っている環境だ。
その一方でも欠けていれば、犯行の対象から外すという。
シンプルな話に思えるが、一般人が普段から自分の家や地域についてそうした点を意識して暮らしているかといえば、否定せざるをえないのが実情。小宮教授に防犯指導を依頼する大人たちも、実際に会ってみると理解が浅いことが多いそうだ。
「『景色解読力』と呼んでいますが、『入りやすくて見えにくい』のはどういう場所なのか、というルールさえ知れば、家や近所で危ない場所がわかります。ところが、日本には『不審者』という言葉があるように、『人に気を付ける』という点が重視されてしまっています。
犯罪をするという視点で、『あの人は不審だ』と判断するのは不可能に近いこと。それよりも、狙われやすい家や地域の危ない場所を把握し、重点的に対策やパトロールをしたほうが効果的なのです」