【産業天気図・パルプ・紙】原材料は価格安定も、洋紙低調と円高が痛手、相変わらずの「曇り」続く

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

製紙業界は2011年3月まで、従来と変わらず「曇り」の低調な景況感が続く。

主力市場である洋紙は長期低迷に歯止めがかからない。今年前半1~6月の累計国内出荷高(トン数ベース)は板紙が前年比7%増と盛り返したものの、洋紙は2.5%上向いたにとどまる。しかもこの数字は春先の貯金に負うところが多く、5月には6カ月ぶりに前年同月割れとなり、7月もまたマイナスを記録した。

数量だけではない。単価も軟調だ。最大手の王子製紙は4~6月の第1四半期に紙の国内出荷が前年同期比マイナス0.6%と落ち込み、業界全体の4%の伸びを下回った。これはシェアを落としたことを意味し、ある種の“異変”と表現してもいい。そこには「消耗戦を繰り広げたところで、国内市場に明日はない」(王子製紙・経営管理本部)と割り切りがある。ある問屋も「王子さんの(価格重視の)政策は我々の目にもはっきり分かる」と証言する。

パルプ価格がピークを打ち、古紙価格も予想以上に落ち着くなど足元では懸念材料薄らいでいるのは確かだ。猛暑効果もあって、レンゴーなど飲料向け板紙・段ボールを手がけるメーカーには笑みもこぼれる。だが、主力の洋紙市場の低調がこういった好材料を相殺する。

一方、今後業界のテーマとなりそうなのは「海外展開」だ。最大手の王子製紙の頭の中は今、秒読み段階に入った中国工場の運転開始でいっぱいだ。95%を出資する、日本の製紙業界初となる中国工場。その成否は今後の業界の国際化の試金石としても注目される。

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