「水族館の人気者」イルカが迎える恐ろしい結末 太地町のイルカ猟を毎日記録してわかったこと

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グレーのシートの下では、「太地町立くじらの博物館」や太地町内にある民間のイルカふれあい施設のドルフィントレーナーたちが、イルカたちの性別や体長、推定年齢を確認し、調教への適性や、見た目の綺麗さなど、水族館への販売に適した個体を選んでいきます。

この日は2頭のイルカが選別されて運搬用の担架に乗せられ、湾内に設置されているイケスに運ばれていきました。このイルカたちはこれから、芸をするための調教を受け、水族館に売られ、プールの中で生涯を終えることになります。

そして、水族館向けに選ばれなかった残りの16頭はというと、「食肉」となるため全頭が殺され、太地漁港の市場へと運ばれていきました。これが、猟師や一部の政治家が言うところの「伝統文化」イルカ追い込み猟の現実です。

(太地町のイルカ猟が世界の水族館への輸出ビジネスに支えられていることをまとめ、私も取材を受けた世界的メディアVice Mediaのドキュメンタリー)

私はこのような光景を毎年、猟期の6カ月間、毎日記録しています。イルカは家族の絆が強く、早く泳げない赤ちゃんや年寄りを守りながら最後まで群れで固まって泳ぎます。

運動能力が高い個体だけ逃げるようなことはありません。また、優しい性格で人間を攻撃することもないため、いとも簡単に群ごと捕まってしまうのです。母親イルカが殺されている横で、赤ちゃんイルカがパニックになって岩壁に打ち付けられて溺れている様子をたびたび目にしてきました。

「太地町開発公社」のイルカのイケス(@Life Investigation Agency/Dolphin Project)

太地町のイルカ追い込み猟は、1960年代にアメリカがドルフィナリウム(イルカの水族館)のブームに沸いていたのと同時期の1969年に設立された「太地町立くじらの博物館」や、太地町長が理事長を務める「太地町開発公社」、そしてイルカとの触れ合いをビジネスとして行っている民間企業、イルカの生体販売企業などと連携して行われています。

太地町においてイルカの販売を多く手がける、太地町開発公社の売り上げは、国内そして海外の水族館などへ生きたままで売る「生体販売」が約8割を占めています(和歌山県に情報開示請求して得た資料による)。食用のためというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実際には水族館向けビジネスによる収入が圧倒的に大きくなっています。

より詳しい実態について把握するべく昨年9月、太地町に対して情報開示請求を行いましたが、受け取った資料は重要部分の大部分が開示されない黒塗りの状態でした。さらに今年1月にも、太地町や太地町立くじらの博物館などに取材を依頼しましたが、すべての団体から「取材には応じられない」との返答でした。

2021年9月、太地町に情報開示請求して届いた資料(@Life Investigation Agency/Dolphin Project)
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