「水族館の人気者」イルカが迎える恐ろしい結末 太地町のイルカ猟を毎日記録してわかったこと

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フランスの新動物愛護法案は「行き過ぎ」なのか

昨年11月、フランス議会で野生どうぶつの利用を禁止する法案が可決したことがニュースになりました。仏大統領の署名を経て新法として成立すれば、2026年からイルカショーが禁止されることになります。

他にも2024年からペットショップでの犬や猫の販売の禁止や、2023年にサーカスでのライオンやトラ、熊などの野生どうぶつのショーの禁止、そして2028年にはそれらの施設での野生どうぶつの所有自体が違法となります。

これは、どうぶつの扱いに対するフランス市民の意識の高まりを反映させた結果です。狩猟や闘牛、そして非常に残酷なフォアグラが対象になっていないなどまだ多くの議論がありますが、どうぶつの尊厳を見直す大きな一歩になることには変わりありません。

フランスの法案は、これまでの調査や研究を反映させた結果であり、この流れは世界中で加速してゆくでしょう。すでに欧州の20カ国以上は、どうぶつを娯楽目的で利用することを制限しています。

一方、日本国内の反応を見ていると「やりすぎだ」「イルカショーはなくなってほしくない」「イルカもショーを楽しんでいるのでは」といった声も多いように思います。しかし、過去のイルカに関するさまざまな研究や、イルカ猟の現場を毎日見ている私には、このようにどうぶつ愛護が進むことは、至極真っ当なことと感じます。

イルカは笑っているように見えることがあるが、もともとの骨格である(写真:Getty Images/ALesik)

水族館での商業的な扱いは、イルカの生態について誤解を招いているとも言えます。例えば、私たちがイルカもショーを楽しんでいると感じる要因として、イルカが笑っているように見えることが挙げられます。しかし、イルカには表情筋がなく、もともとの骨格で口角が上がっているにすぎません。

イルカはお腹が空いていないと芸をしないと、複数の元ドルフィントレーナーや専門家が指摘しています。事実、イルカショーの最中、ドルフィントレーナーは芸と引き換えにつねに餌を与え続けています。イルカにとってショーは“食事が貰える機会”であり、サーカスのどうぶつと同様、生きるため、飢えないために、芸をしているだけなのです。

世界の流れに取り残される、日本

日本では、約500頭のイルカが水族館などで飼育されています。中国の約700頭に次ぐ世界第2位の飼育数ですが、人口比に換算すると中国の約8倍と他国と比べて圧倒的に多い数です(「behind the smile - dolphins in entertainment report」より)。

それに加えて私たちの調査で、昨年11月末時点で、1つの小さな町である太地町のイケスで、219頭ものイルカと小型のクジラが、生体販売のための“在庫”として飼育されていることがわかっています。そのうえでさらに、イルカを捕るための猟が毎年6カ月間、ほぼ毎日行われています。世界的に見て極めて特異的な状態です。

なお太地町では、2019年に998頭ものイルカが捕獲、屠殺されています。

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