動物界にもあった「格差社会」の知られざる実態 親の「資産」を受け継ぐ動物が研究で明らかに

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カリフォルニア州オークランドにあるミルズ大学の行動生態学者、ジェニファー・スミス教授は、新型コロナウイルスのパンデミック初期にカリフォルニア大学ロサンゼルス校のバーバラ・ナターソン=ホロウィッツ教授とマイケル・アルファロ教授と、(もちろん)Zoomを使って話したとき、この論文のアイデアが生まれたと語る。

スミス教授らは、新型コロナが世界中の健康格差などの不平等を浮き彫りにしている様子を目の当たりにした。そして、動物で研究すれば不平等についてさらに知ることができるのではないかと考え始めた。

親族以外から資産を受け継ぐ場合も

スミス教授は「探し始めたら、たくさんの事例が見つかった」という。

アカライチョウの若鳥は、父親や親類が近くにいると、うまく自分の縄張りを確立できることが多い。地位の高いメスハイエナから生まれたメスの子は、母親の地位を継承して、新鮮な肉の分け前を手に入れる。チンパンジーやオマキザルには、親が使っていた石器で木の実を割るものもいる。

動物の資産は親族以外にも受け継がれることがある。例えば、共有の巣を乗っ取るアシナガバチ、よりよい場所を求めるヤドカリなどがそうだ。

動物の間での資産移動について研究する科学者の疑問はこんな感じだ。

親と一緒に暮らしているトカゲの寿命は、比較的長いのか?木の実を割るために比較的大きな石にアクセスできるサルは子孫も多くなるか?生物学者たちは、人間の場合は文化関連で見られる複雑な事情のすべてに取り組まなくても、動物の特権を研究できる。

スミス教授は、人間の特権と動物の特権の類似点を探ることで、自然界の不平等について新しい知見を得られればと願っている。「人間以外の動物の不平等の法則性は、私にとって、とてもエキサイティングな研究課題だ」と同教授。「これほど多くの種で同様の現象が見られたことに、非常に驚いた。私たちは、表層を調べているにすぎないのに」。

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