年内に脱原発達成のドイツがEUで孤立し始めた訳 エネルギー価格高騰に加え、外交でも苦しい立場

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ドイツの脱原発政策は、エネルギー問題以上に「政治問題」として長年こだわり続けた歴史がある。

それは1979年のスリーマイル島(アメリカ)での原発事故と1986年のチェルノブイリ原発事故によって、極めて政治イデオロギーの色濃い緑の党が主導する反核運動がドイツで高まり、商業用原子炉建設が阻止されたことにある。見方によれば、環境と気候の保護に対する一般国民の意識が高まった一方、地球温暖化抑止のプロセスの合理性より、つねに政治が先立つのがドイツだったといえる。

特に東京電力福島第一原子力発電所の事故はドイツの原発ゼロ政策を決定的にし、その後、いかなる環境変化の中でも原発廃止を最優先してきた。左派とは一線を画すメルケル前独首相も「原子力は長期的には持続可能な形のエネルギーではないと思う」との見解を示している。

2021年12月に発足した社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の新ドイツ政権は、その連立協定に「脱原発を支持する」とわざわざ書いた。新政権で環境・自然保護・原子力安全・消費者保護相を務めるシュテフィ・レムケ氏(緑の党)は「(原発のような)有毒廃棄物の処分のための解決策がない技術は持続可能ではありえない」と述べた。

ロベルト・ハベック副首相兼経済・気候保護相(緑の党)は「原発の段階的廃止はドイツの決定であり、法律によって明確に規制されており、有効だ。ドイツの電源の安全供給は引き続き保証されている」と胸を張った。はっきりしていることは今年末、ドイツの原子力事業者は法的に運転免許を失効し、廃炉作業に入るため、二度と後戻りできなくなることだ。

ロシアからのガスパイプラインが「逆流」

日本の自動車メーカー、トヨタ自動車の豊田社長が電動自動車(EV)の普及による電力需要増大を指摘しているように、ドイツの著名な自動車産業の専門家、フェルディナンド・ドゥデンホファー氏は「成長するEVや暖房産業など他のセクターからの電力需要の高まりに伴い、ドイツは原子力発電所からの追加の電力生産を必要としている」との主張もある。

欧州は今、ガソリン価格の高騰に加え、温暖化ガス排出量の少ない天然ガスの価格が30%以上高騰している。エネルギー価格の高騰は、人々の生活と産業に直接打撃を与える。コロナ禍からの経済の立ち直りが期待される中、問題は深刻化している。

高騰の原因はコロナ禍からの回復で世界的にエネルギー需要が急増していることに加え、ロシアからの供給が減り、ロシア産ガスを欧州へ送る主要ルートの1つ、「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインは通常西向きに流れるはずが、東向きの流れが急増していることにある。

年末年始2週間でドイツからポーランドにガスが流れ、ウクライナからスロバキアへのロシア産ガスの供給も減少している。

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