「練習嫌い」内村航平の競技人生を支えた深い言葉 加藤沢男さんが19歳の内村に告げた言葉が響いた

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そういえば、加藤さんも同じことを言っていた。全競技を通じて日本人最多となる8個の金メダル。「いちばん印象に残るメダルは?」と聞くと、1972年の個人総合連覇でもなく、1976年の団体総合逆転優勝できもなく、意外な答えが返ってきた。

「1976年個人総合の銀メダルだね」。3連覇を狙いならが敗れた銀。「初めて負けた人の気持ちになれた。あのまま勝ち続けてやめていたら、つまらない人生になったよ」。負けたからこそ、得られたものが大きいという。「栄光」が大きければ大きいほど「挫折」の経験は貴重になる。

継承してきたものを次の世代に「伝える」大切さ

1960年ローマ大会からの五輪団体総合5連覇、低迷期を経ての2004年アテネ大会団体総合金メダルの「栄光の架け橋」。受け継がれてきた「美しい体操」と「世界一の練習」。内村自身が継承してきたからこそ、次の世代に「伝える」ことを大切に思うのだろう。

加藤さん自身は内村にかけた言葉について「そんなこと、言ったかなあ」と話したが、圧倒的な競技成績を残したからこそ、言葉が響く。「加藤さんらしいなあ」と苦笑いした内村こそが、その立場にある。若い選手は「(内村)航平さんから言われたから」と口にする。何気ない言葉も、その影響力は絶大なのだ。

日本スポーツ界で、名前の前に「キング」がつく選手は少ない。競技力だけでなく、圧倒的な「影響力」があるからこそだ。だからこそ、これからの内村が楽しみ。体操界、スポーツ界に何を発信し、何を残すのかにも期待したい。

内村が引退を発表したのと同じ11日、日本サッカー界の「キング」カズが移籍を発表した。Jリーグの横浜FCから下部リーグJFLの鈴鹿ポイントゲッターズに。こちらも、抜群なのはその影響力。多くのサッカー選手や周囲に何を与えてくれるか楽しみになる。

3月12日、内村の「引退試合」が行われる。翌13日にはJFLが開幕する。2人の「キング」が新たな道を歩み始める。

(荻島弘一)

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