「食料自給率」の罠 川島博之著
昨年、日本の食料自給率が40%に戻って、政府目標の50%(2020年度)に向け、一進一退の歩みが続く。はたまた「食料安保」の懸念をかき立てられそうだが、本書は「日本農業の振興のために、食料自給率を上げる必要はない」、むしろ「上げられない」のが正しいと説明する。試算では「休耕地や耕作放棄地をフルに活用しても、50%程度にするのが精一杯」という。
加えて「食料安保」を五つのケースで検討し、杞憂の語源を引用しつつ、「食料自給率を食料安保に結び付ける議論は、どこかその杞の国の人の心配に似ている」と結論付ける。
では、自給率にこだわらず、世界で勝てる日本農業をどう実現するのか。目指すべきモデルは、農業の純輸出額世界一のオランダ。コメの国内生産に配慮しつつ、畜産、花卉、野菜などを「工業的な農業」によって強い産業に育てることを推奨する。八方ふさがりの日本農業に議論を呼ぶ政策素材を提供してくれる。
朝日新聞出版 1575円
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