採用してかなり後悔した「中途社員」の5大特徴 一部業界では「経歴詐称」スレスレのケースも

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ところで今回、中途採用で不本意な結果を招いていることについて、人事部門から反省の弁がたくさん聞かれました。1つは、「採用の進め方」の問題です。

新卒採用では、ある時期にたくさんの学生を選考しなければいけません。学生の場合、潜在能力は不確かです。それに対し中途採用では、採用数が少ないのでじっくり選考できますし、応募者のスキルや経験などもかなり明らかです。一般に、新卒採用よりも中途採用のほうが、人事部門にとって難易度が低いはずです。

「中途採用で失敗するというのは、採用担当者が転職エージェントに頼りきりで面接など手抜きしているか、面接スキルが不足しているか、どちらかでしょうね。いずれにせよ我々人事部門として大いに反省するべき点です」(住宅)

また、中途採用をどの部門が主体的に進めるべきか、という課題があります。

「当社では、中途採用についても人事部門が中心になって実施していますが、技術が高度化し、応募者の経歴・スキルなどを正確に評価するのが難しくなっています。中途採用については、各部門が主体的にやり、人事部門は側面でサポートするような形に、採用プロセスを見直す必要がありそうです」(精密)

受け入れるプロパー社員にも問題がある

もう1つの問題は、中途採用社員を受け入れるプロパー社員の側の姿勢です。経営トップは、事業・組織を変革する先導者として中途採用社員に期待し、人事部門はその期待に応えるために優秀な社員を採用します。ところが、こうした意図や取り組みが配属先のプロパー社員に伝わらず、中途採用社員が十分に活躍できないという事態が発生しています。

「当社では、プロパー社員が中途採用社員をよそ者扱いしがちです。中途採用社員が良い提案をしても、プロパー社員が『わが社にはわが社のやり方がある』とか、『まずわが社のやり方をちゃんと勉強してからモノを言え』と、頭ごなしに否定するケースが多々あります」(商社)

「以前、現場の古参のプロパー社員が中途採用社員に『そんなに前の会社が良いなら、さっさとうちを辞めて出戻りしたら?』と言い放って、本当に退職し出戻りしてしまいました。この話を披露すると笑われますが、私はちょっと笑えません」(食品)

事業・組織を改革するためには、プロパー社員も中途採用社員もマインドを変え、お互いが知恵を出し合う必要があります。しかし、そういう良好な関係を構築し、実際に改革の成果を実現しているという企業は少ないようです。

日本企業にすっかり定着したと言われる中途採用。しかし、採用プロセスや受け入れるプロパー社員の姿勢など、反省し、改善するべき点がまだまだありそうです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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