天に問う手紙 小林弘忠著
渡辺はま子の歌う「モンテンルパの夜は更けて」。この歌で、フィリピンに拘留されたBC級戦犯を救援しようとする運動は一挙に盛り上がった。死刑執行におびえ故国への帰還を待ちわびた100人を超す受刑囚はいかにして励まされ続けたか。彼らが冤罪を免れてようやく日本の地を踏んだ時、敗戦から実に8年の歳月が経過していた。
その陰には、復員局職員植木信吉の役人の分を超える活動と、現地で4年間まさに粉骨砕身、受刑囚を励まし助命活動を続けた仏僧加賀尾秀忍の存在があった。特に植木の執念は、保身や出世とは無縁の生き方として極めて印象的だ。
刑務所生活、留守家族の思い、会報「問天」発行の苦労、救援記録、フィリピンの反日感情と戦後賠償問題など、
記述は時に詳細にすぎるほどだが、意表つく死刑執行の衝撃、モンテンルパの歌の誕生秘話、妻子を日本軍に殺されたキリノ大統領の苦悩など起伏もあり、後日談の後味もいい。(純)
毎日新聞社 2310円
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら