クルマの「安全運転支援」脳科学も生かす最前線 マツダは「副操縦士」を開発、ホンダは独自の研究

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この発見に基づき、視線の偏りをリアルタイムで解析する技術の開発も進めているという。薬事法との兼ね合いがあり、マツダが病気の診断を行うことは難しいが、医療機関と連携することで、「予兆」をてんかんや脳血管疾患、心疾患などの早期治療に役立てられる可能性がある。

2025年には緊急時の対応も進化させる。高速道路では車線変更をして路肩に停止したり、より状況が複雑な一般道でも、より安全な場所に退避したりできるようにする計画だ。

他の自動車メーカーも、高速道路で先行車との車間を維持したり、車線を維持したりする自動運転時などにドライバーの異常を検知すると同一車線内で減速・停止したり、路肩に自動退避したりするシステムを導入している。

ただ、マツダが今年から導入する技術は、自動運転でない場合や、一般道や低速運転時でも対応できる点が特徴だという。小島岳二常務執行役員は「まずは重大事故に繋がりやすい眠気や体調急変による事故を減らしたい。『安心・安全な移動ができる』という価値を消費者に提供していく」と話す。

ホンダは「カスタムメイド」に重点

マツダと同様、AIや脳科学に着目するのがホンダだ。ホンダは2050年に世界で自社ブランドの四輪・二輪が関与する交通事故死者ゼロを掲げる。現在開発中なのが、AIでドライバー1人ひとりの状態や周辺環境のリスクを解析して危険を知らせる運転支援技術だ。

ホンダの脳科学研究の様子(写真:ホンダ提供)

カメラで捉えたドライバーの視線のデータから脳の認知状況を分析。歩行者や自転車、車の接近があった場合に、ドライバーの認知状態に応じて、警告音やシートベルトによる締め付け、シートからの振動音によって危険を知らせる。

主に運転中に視野が狭くなりがちな初心者や若年層を想定している。操作反応が遅れやすい高齢者など運転に不安がある層も想定し、ハンドル制御の状況を感知しアクセルやブレーキの制御を行う技術も研究中だ。

ホンダはこうした「知能化運転支援技術」を2020年代前半に要素技術として確立し、2020年代後半には実用化する方針だ。2021年の交通安全白書によると、死亡事故の原因のうち運転操作ミスや漫然運転、脇見運転などドライバーの違反の割合が9割以上を占める。ホンダは以前から人の運転行動や脳状態の研究を独自に進めてきた。ドライバーを起因とした危険を事前に察知し、リスクそのものを減らすことで死亡事故の低減につなげる。 

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