選挙に連敗した台湾の国民党に未来はあるのか 国会議員補選に負け、リコールも拒否され…

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このような国民党のダークなイメージの典型例として、顔氏一族のような党内の本省人(戦前から台湾にいた人々)地方勢力と金の問題が有名である。一部では、故・李登輝元総統が、外省人(戦後台湾に渡った中国人)勢力を党内から追い出すために、このような人々を引き入れたと言われている。

以下は筆者の考えだが、今回の選挙戦を見ると、李元総統はいずれ民主化された台湾の有権者が、これら負の部分も一掃することを見越したうえで、顔氏一族のような人物を引き入れたのではと感じるようになった。時間はかかるが、民主社会では社会正義は確かに存在する。台中の補欠選挙では、台湾の良心が見えた。

リコール乱発に国民党急進派の存在

次に林氏のリコール投票について見てみる。

林氏のリコールを要求した団体には、以前から質問をしていたがコメントは得られなかったが、台北市選挙管理委員会が公告した資料からリコールの概要は次の通りである。

(1)万華地区の人々が、感染拡大した理由を知りたいにもかかわらず、与党と結託し『3プラス11』(航空乗組員らに対する隔離措置として、3日間の完全隔離と11日間の自主健康管理を課したものを指す)がどのように決定されたのか、その会議記録の公開に反対した。
(2)飼料に成長促進剤を混入して飼育した食肉や遺伝子操作で飼育した食肉を学校現場に入れない「学校衛生法」の改正に反対し、学生の食の安全を脅かしている。
(3)戦後、国民党による台湾人虐殺事件である二二八事件を記録する二二八財団の理事就任したものの、在任中に15回開催された会議に1回しか出席せず、遺族の思いを踏みにじった。
(4)中正万華地区選出の議員として、地元住民の要求を代弁する立場にありながら、与党におもねり、台湾中央感染症指揮センター(台湾CDC)指揮官の陳時中・衛生福利部長が万華地区の視察に来た際には、わざわざ車両まで出迎えに向かった。行政機関を監督する立法委員の立場と尊厳を著しく傷つけた。
(5)台湾独立を高々に唱え、中華民国の立法委員にもかかわらず国家の主権と憲法を無視している。

公告ではこれらの理由に対し、林氏は一つ一つ丁寧に回答し、反論している。東洋経済オンラインへの回答でも、リコールを要求するまでもなく説明が得られるものだ。一見、理不尽とも言えなくもないリコール要求に、多くの人々が呆れてしまったのは想像にたやすい。そもそもリコールが乱発される背景に、国民党内で影響力が増している急進派の存在がある。リコールされた韓氏のあだ討ちにも似た行動が続いているのである。

韓氏の人気を表す興味深いエピソードがある。朱氏が大衆の前に現れても人々は冷静なままで礼儀正しいのだが、韓氏が現れると途端に熱狂の渦が形成されるという。2022年1月2日、自著を紹介するために久しぶりに支持者らの前に姿を見せた韓氏に、会場は熱気に包まれた。

選挙後、朱氏のソーシャルメディア(SNS)では、国民党支持者らによる主席辞任と韓氏の就任を要求するコメントがあふれた。党主席として大局的に判断したい朱氏からすれば、急進派の存在と扱いは非常に厄介であることは間違いないだろう。

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