選挙に連敗した台湾の国民党に未来はあるのか 国会議員補選に負け、リコールも拒否され…

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林氏のリコール投票では、国民党は真剣に対応しなかったとの指摘がある。実際に、リコールに同意した票数は反対よりも上回っており、2期連続当選した林氏といえども、選挙区は依然として国民党の力が強いことが改めて証明された。しかし、仮にリコールが成立したとして、その後の補欠選挙で誰を推し、どう選挙に挑むのか、そして来る統一地方選との兼ね合いはどうするのか。これら党の戦略を考えた結果が、リコール投票に力を注がない、だったというのだ。

「中国統一」が台湾人の猜疑心を招く

しかし、2021年12月に実施された住民投票では民進党が完勝し、さらに今回の2つの選挙でも勝利した勢いは明らかに無視できない。また、党全体で選挙に臨む民進党の姿勢は、迷走を続ける国民党のそれと完全に対比して人々の心に残った。

最後に最近の台湾の選挙におけるエピソードを2つ紹介したい。

1つは、民進党に関するもので、頼清徳副総統が選挙応援に立てば立つほど、その候補者は大勝するというジンクスだ。実際に、今回の補欠選挙では、林氏が立候補を正式表明してから10回以上応援に立ったという。住民投票でも100回以上全国で説明演説に立つなど、カリスマ性とともに献身的な働きが有権者の心をつかんでいるのだろう。次の総統選に出馬すると言われる中、頼氏の動向にも注目したい。

もう1つは、中国が国民党の応援をすると、民意が離れ、選挙で敗退することが、まことしやかにささやかれていることだ。中国からすれば、形は違うが中国統一を志向し、最大野党の国民党を応援するしか選択肢はないのかもしれない。しかし、表立って支持を表明することで、多くの台湾人の猜疑心を招き、中国との距離がさらに離れているのが実情だ。

台湾社会に寄り添う改革を進めるのか、敗北を続ける国民党に引き続き注目したい。

高橋 正成 ジャーナリスト

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たかはし まさしげ

特に台湾を中心に、時事問題をはじめ、文化、社会など複合的な視座から問題を考えるのを得意とする。現役の翻訳通訳者(中国語)。

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