「男性版産休」10月スタート、結局何が変わるのか 育休法の改正、それでも解決しない4つの問題点

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第2の問題点は、育休取得回数の細分化をすることが、必ずしも男性従業員の積極的な育児への参加につながるとは限らないということです。

今回の法改正では、出生時育児休業と、従来の育児休業制度を合わせると、いずれも時期をずらして2分割取得が可能になるので、男性労働者は最大で4分割して育児休業を取得できるようになります。

このこと自体は、例えば繁忙期がある人などにとっては取りやすく、もちろん大変良いことだと思います。

しかし、私見になりますが、自分自身がテレワークをしながら妻と共に育児に向き合ってみて実感したのは、男性が小刻みに育休を取ることよりも、短時間勤務やテレワークなど、継続的に育児と仕事を両立させる働き方を充実させていくことのほうが重要なのではないかということです。

育児は1日も休むことなく毎日行わなければならないものです。とくに新生児の間は、3時間おきに授乳が必要なので、育児は24時間体制です。

そのような中、例えば、産後2週間はパパが育児休業を取得してママをサポートしたとしても、パパが職場復帰する2週間目以降はママに負担が集中してしまいます。パパの意識としても、「育児休業期間中だけ積極的にママのサポートをすればいい」という感覚になってしまいがちです。

また、育児に慣れないパパが、スポットで参戦しても、抱っこの仕方が危なっかしかったり、衛生面での対応が十分ではなかったりして、逆にママのストレスになってしまう可能性もあります。

無理なく継続的に育児に参加できる仕組みを

ですから、パパの育児における役割分担を決めて、「テレワークをして、沐浴の時間だけは仕事を離れられるようにする」とか、「短時間勤務をして日が出ている暖かい時間帯のうちに上の子の散歩をできるようにする」といったように、パパが働きながら、無理なく継続的に育児に参加できるような仕組み作りがもっと注目されてもいいのではないかと思うのです。

現行の育児介護休業法においても、3歳までの子を養育する親には6時間の短時間勤務が認められてはいます。しかし、社労士の立場から見て育児休業ほど活用が進んでいるとはいえません。

その理由として、育児短時間勤務が育児介護休業法に定められた権利として、男女問わず認められていることに対する社会的な認知や注目がまだ低いことが挙げられるでしょう。

また、時短勤務をした分の給与はカットになり、これに対する公的な所得補填制度もないため、金銭的な面も、短時間勤務の普及を妨げているのではないかと考えられます。

ですから、男性の育児への参加を促進させるためには、「休む」「休まない」の2択だけではなく、育児短時間勤務を行った場合に本来の給与との差額を埋める給付金を支給するとか、育児目的のテレワーク制度を導入した企業に助成金を支給するとか、多様な面から男性の育児参加を促すための制度整備を行う必要があるのではないでしょうか。

第3の問題点は、有期雇用労働者の育休取得条件緩和の法改正は、実質的に「骨抜き」なのではないかということです。

今回の法改正により、有期雇用労働者の育休取得要件から「勤続1年以上」という要件はなくなります。

ところが、会社と労働者代表が「労使協定」を締結すれば、正社員・非正規社員問わず、勤続1年未満の者を育児休業の取得対象から除外できるという例外規定は残されているのです。

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