「男性版産休」10月スタート、結局何が変わるのか 育休法の改正、それでも解決しない4つの問題点
男性従業員が配偶者の出産日当日に立ち合いを望む場合は、出産予定日を開始日とした育児休業の取得を申請することになります(現行法でも改正後も、出産予定日前を開始日として育児休業の取得を申請することは不可)。
出産予定日通りに配偶者が出産した場合や、出産予定日以降に出産となった場合は、男性従業員の希望通り育児休業を取得のうえ、出産に立ち会うことが可能です(出産予定日に未出生の場合も、出産予定日から育児休業取得を開始できる)。
問題となるのは、出産予定日よりも前に出産となる場合です。
出生時育児休業を含め、育児休業の開始予定日を変更する場合には、1週間前までに会社に変更の申請を行う必要があります。1週間前に変更の申請がなされなかった場合、会社は、育児休業の開始日を申請日から1週間以内の日に指定することができます。
例えば、男性従業員が「妻が今朝破水して、今日中に産まれそうなので、前倒しで育児休業を取得させてください」と会社に連絡したとしても、会社は「君の事情はわからないではないが、今日は大事な会議があるから育休は明日からにして、今日は出社してください」と命じる権利があるということです。
また、妻の退院後すぐに育児に参加したいという場合にも1週間前までの変更が必要ですので、入院を6日程度と考えると慌ただしく申請、退院と同時に取得ということになります。
突然働けなくなるということは誰にでも起こりうる
多くの会社では、従業員に配慮をして、法律上のルールにかかわらず、育児休業の前倒しを認めると思いますが、法的な裏付けがなければ、従業員は、本当に出産日当日から育児休業を取れるのか、不安を感じてしまう人もいるでしょう。
ですから、出産日が前倒しになった場合には、無条件に育児休業の取得前倒しが可能となるよう、立法上の対応が必要なのではないかと筆者は考えます。
経営者サイドからは「従業員にとって、配偶者の出産が人生の一大イベントであることは理解するが、急に休まれてしまっては業務に影響する」という声が聞こえてきそうです。
しかし、従業員本人が急病になったり、不慮の事故に巻き込まれたりして、従業員の誰かが突然働けなくなるということは、日常的に起こりうるリスクです。
このようなリスクにきちんと備えて、仕事を属人化させないよう標準化したり、人手不足のときは外部のアウトソースする業務を決めておくなど、対策を考えていれば、育児休業の当日前倒しも、受け入れることが可能になるのではないでしょうか。
なお、就業規則上に「特別休暇」や「慶弔休暇」といった名称の休暇が定められ、配偶者が出産した場合、当日含め、1日~数日の休みを取得できる定めになっている企業も多いですが、これはあくまでも各企業が任意に定めた休暇であり、法律上義務化されているわけではありません。
就業規則自体が整備されていないような小規模企業で働く人も含め、安心して配偶者の出産に立ち会ったり、産後直後のケアをできるようにするためには、やはり、さらなる前進が望まれるのではないでしょうか。
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