資源開発では地政学リスクの管理が重要だ 石油メジャー首脳が語る、エネルギー市場の今

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もう1つのリスクは、資源が実在するにもかかわらず、生産の収益性が上がらないというケースだ。生産井が深すぎて掘削のコストがかさんだり、ハイドロカーボン(石油や天然ガスの主成分である炭化水素)の含有量が十分でなかったり、岩石の状態がよくなかったりして、経済性のある形で生産ができない場合だ。

しかし私自身、シェールガス、シェールオイルがエネルギー業界における「革命」であるとの認識には変わりはない。

最近メディアでも報じられたように、米国はシェールガス増産によって、すでにロシアを抜いて天然ガスの生産で世界トップに踊り出ているが、石油産出国としても今年中に世界一になると見られている。トタルとしても、シェールガス、シェールオイルのような非在来型の天然ガスや石油の開発によって、これからも地歩を築いていきたいと考えている。

当社はすでに、米国においてはバーネット(テキサス州)でシェールガス、ユーティカ(オハイオ州)において液体含有量の多いウェットガス(湿性ガス)の開発を行っている。米国で蓄積したノウハウを活用すべく、アルゼンチンでもシェールガス権益を取得し、生産可能量を調査している。そのほかにも豪州、英国、デンマーク、ロシア、中国でシェール関連の権益を持っており、長期的な開発を計画している。

われわれは、収益性があることを条件に開発を行うという基本方針だ。資本効率性をベースに厳しく事業を選別している。われわれの収益性の目標をにらみながら、非在来型のガス、石油の開発を積極的に進めていく。

INPEXとのイクシス計画は非常に順調

――特に日本企業の資源開発にとっては、よいパートナーが重要といわれる。

在来型、非在来型資源を問わず、生産・開発の高いスキルを持ったパートナーを持つことが重要だ。そして、トタルはこれまでも日本企業にとって、よきパートナーであったと自負している。

われわれは多くの日本企業とパートナーシップを組んでいるが、最も重要なのが国際石油資源開発帝石(INPEX)との長年の協業だ。インドネシアから始まり、アラブ首長国連邦、カザフスタン、カナダ、アフリカのアンゴラ、そして豪州で共同事業を行ってきた。

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