ANAが格安航空に参入、運賃半額の危ない賭け
2年越しの案件がついにベールを脱いだ。
全日本空輸(ANA)は9月9日、格安航空会社(LCC)参入を発表した。関西国際空港を拠点に来年度下期から国内、国際線で運航、運賃は既存大手の半額程度を目指す。
今年末にLCCを運航する新会社を設立。資本金100億~150億円の内、ANAが40%未満出資して筆頭株主となり、香港投資会社ファーストイースタン投資グループが航空法の外資規制上限となる3分の1未満を出資し、2位株主になる。残りは旅行や観光業、金融業など国内投資家から幅広く募る方針だ。
新会社はANAの連結子会社とせず、まったくの別会社、別ブランドとして運営する。従業員は新規募集し、給与体系も分ける。整備などはANAへ当初委託するが、その後は独自性を保つ考えだ。
4時間以内で飛べる短距離路線の単純往復に専念し、航空機は燃費の悪い大型機は持たず、小型機に統一。機内食や荷物の預け入れなど、手間のかかるサービスは有料化し、低コスト運営を徹底的に追求する。当初は5機をリースし、国内と国際線にそれぞれ3~4路線運航、5年後には15~20機に増やす計画だ。
9日に会見した伊東信一郎社長はLCC参入について「潜在需要の大きなアジアからの訪日需要開拓につながる」と攻めを強調する一方、海外LCCの日本来襲が相次ぐ中、「防波堤的な効果もある」と守りも企図した。
株主からは反対意見も
ただ日本航空の路線リストラによって優位な競争環境が築けているにもかかわらず、LCCに参入する経営判断を疑問視する声もある。6月の株主総会では「ハイクオリティを目指すべき。格安に手を染めれば、既存との顧客の食い合いになりかねない」と株主が食い付く場面もあった。