昨年大みそかのNHK『紅白歌合戦』(以下:昨年紅白)には、たいへん満足した。おかげで気分よく新年を迎えることができ、酒も進んだ。
しかし翌2日、元日早々のおとそ気分に冷水をかけるようなニュースに出くわした――「紅白の視聴率、歴代最低」。ツイッターのトレンドにも「歴代最低」の4文字が上がっていた。
昨年紅白の世帯視聴率(ビデオリサーチ/関東)が前半31.5%、後半34.3%で、無観客開催にもかかわらず視聴率好調とされた一昨年(2020年)紅白の前半34.2%、後半40.3%を、それぞれ下回ったのだという。特に後半は6.0ポイントものマイナス。
「歴代最低」とは、この後半に関して。これまで歴代最低だった2019年紅白の37.3%を、昨年紅白はさらに3.0ポイント下回り、2部制となった1989年以降、最低の水準となったという。
ちなみに「世帯」ではなく「個人視聴率」で見ても、昨年紅白は前半23.4%、後半24.8%で、一昨年の前半25.0%、後半29.6%から落としている。
こういう結果となると、いきおい「質」(番組内容)的視点での問題点探しになり、「人選が、構成が、演出が……」という報道が盛り上がるのだが、ここでは「量」(視聴率・視聴者構造)的視点を、もう少し掘り下げてみる。
テレビをつけている世帯での競争には「勝利」
「量」的視点で示唆に富むのは、鈴木祐司氏がYahoo!ニュース(個人)に書かれた「占有率最高でも世帯視聴率40%割れの不思議~『第72回紅白歌合戦』は“テレビ離れ”の象徴!?~」という記事である。
まず、昨年紅白の「占有率」(テレビをつけている家庭の中で紅白を見ている割合)は、実は一昨年より上がっていて、それどころか、2016年以降で最高値だったというのだ(注:出典はビデオリサーチではなくスイッチメディア/関東)。
つまり、昨年紅白は、実はテレビをつけている世帯の中での競争には「勝利」していた。もちろんこの「勝利」には、裏番組の変化、特に強力なライバルだった日本テレビ系『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないシリーズ』が休止したことの影響も大きいのだが。
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