医系技官の存在が国民を不幸にしている--『さらば厚労省』を書いた村重直子氏(医師)に聞く
--医師を所属機関が内部通報して「犯罪者」にしかねない通知行政、さらに「医療事故調査委員会」の創設の動きもあります。
福島県立病院の産婦人科医逮捕の一件は一つのきっかけだった。医系技官は医療現場の不確実性、遺族、医師の心情あるいは責任感をわかろうとしない。「医療事故調査委員会」創設の問題も計画自体まだ消えたわけではいない。チャンスを狙うかのように近接のテーマでシンポジウムを行っている。今も書類送検は続く。ほかにも、厚労省が介入することによって現場が壊されていく問題はたくさんある。
--その現実を少しでも改善することはできませんか。
舛添(要一)さんの大臣就任で動きがあったように、政治任用、あるいは政治家のリーダーシップが伴えば動かせる。政治家の立場が加わると効力は全然違う。仲間同士で人事権を握る役人では無理だ。ただし、政治任用といっても継続性が問題になる。
--この本で主張されているドクターフィーの導入では?
こういう変え方があるという一例だ。おカネの流れを変えるだけで人間の動き方が変わる。
現在、医系技官が診療報酬を決めている。つまり医療の価格統制を行っている。しかもそれはすべて込みのホスピタルフィーだけだ。現場の医療スタッフは、役人のニーズ判断で決めた価格に従わざるをえない。
このホスピタルフィーからドクターフィーを区別したらどうか。それによって医者がもっと自由に医療の現場を循環できるようになる。病院勤務の医者が開業した瞬間に、ほかの病院に勤務してはいけないというのが今のおカネの流し方。複数の医療機関で診療しても、同じように診療をした分だけの収入が入れば、勤務医不足の軽減にも役立つ。自分のできる範囲内で多様に医療を提供し続けられる。そういう選択肢を今、奪ってしまっている。