そこから、さらに前述の基礎控除として約18兆円、配偶者控除として約5兆円、扶養家族に対して適用される扶養控除として約4兆円などが控除されて、課税対象となる所得が小さくなっている。これらの所得控除が計約60兆円認められており、最終的に所得税が課される対象として残る課税所得は約110兆円となっている。これに所得税率が課されて所得税の負担額が決まる。
つまり、最初にあった収入約250兆円から、控除に次ぐ控除で、最終的に課税対象として残るのは約110兆円になってしまっている。多くの国民は、課税でも重い所得税が課されると認識しているかもしれないが、実際には稼いだ収入の半分以上は課税対象から外されているのである。
税負担軽減策なら、税額控除が所得控除よりも効果的
控除を設けることで、国民の所得税負担を軽減しようとする政策意図があるというなら、それも一つの政策判断だろう。しかし、税負担を軽減するなら、何も所得控除という方法を使わなくても、もっと効果的な方法がある。
それは、税額控除である。税額控除とは、いったん算定された所得税額から直接的に差し引くことで負担額を軽減するものである。わが国の所得税制では、税額控除は約0.7兆円しか適用されていない。このことからもわかるように、わが国の現行所得税制では、圧倒的に所得控除が用いられている。
では、所得控除と税額控除は、どんな違いがあるか。結論から言えば、所得控除よりも税額控除の方が、所得格差是正効果が大きいことである。
例えば、高所得者と低所得者がいて、所得税の累進税率構造により、高所得者は30%の税率に直面していて、低所得者は10%の税率に直面しているとする。そこに、高所得者にも低所得者にも同じように、10万円の所得控除が与えられたらどうなるか。
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