9月18日に、イギリスのスコットランドで独立を問う住民投票が行われた。その結果は、独立反対派が過半数を占め、独立は否決された。9月に入り、世論調査で独立賛成の支持率が反対の支持率を上回ったことから、世界中でにわかにこの住民投票に関心が寄せられるようになった。
「大山鳴動して鼠一匹」ではない、スコットランド問題
独立が否決されたことで、「大山鳴動して鼠一匹」という徒労感があるかもしれないが、決してそうではない。この住民投票をめぐる議論には、財政問題や民主主義をはじめとする「国家の存立を深く考えさせるもの」が多く含まれ、わが国にとっても示唆深いものがある。
住民投票の結果を受けて、スコットランド独立賛成派のリーダーであるサモンド・スコットランド国民党党首は、敗北を認め「それを受け入れる」と表明した。投票結果で少数派が多数派の意見を受け入れるとの潔さは、民主主義には欠かせない。多様な意見がある中で、1つに決定を絞り込むためには、こうした民主主義のルールを尊重する姿勢が必要だ。日本の有権者も見習いたいところである。
スコットランド独立賛成派が一時的に勢いを増した背景の1つには、税財政政策のあり方をめぐる対立があった。イギリス全体の政策志向は、1980年代のサッチャー政権以降の歴代政権で、社会福祉を抑制し、行政サービスの民営化を進めるものとなっている。
しかし、スコットランドの多数派はこれに批判的である。それは、スコットランド議会で、過半数の議席を占めるスコットランド国民党が、貧困層への福祉政策や教育費用の公的負担制度(無償化)の充実を追求していることにも現れている。
ちなみに、スコットランド議会は、スコットランドにおける立法権限の一部を委譲され、1999年に初めて開催された。スコットランド議会において多数を占める政党が、スコットランド自治政府を構成する。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら