ガザ停戦後の和平へ、ハマスが負う責任 イスラエルに歩み寄る努力が必要に

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イスラエル軍を打ち負かすのは不可能とのイメージが打ち砕かれた。ハマス以外のイスラム教過激派が付け込む可能性も出てきた。ハマスはガザ隣接地域の大半のイスラエル人を追い払った。多くのイスラエル人が、政府は国民を守っていない、と非難している。

今回イスラエルには、ガザの封鎖緩和と人道援助物資や建築資材の輸送許可が期待される。しかし、パレスチナ人捕虜の釈放やガザの港湾や空港の開設は、今後の協議に持ち越されるだろう。ハマス側のガザ武装解除なしに、イスラエルがハマスの要求を受け入れる保証はない。

ハマスが負う責任

ハマスの責任は高まっている。ガザの政治的孤立が打破され、停戦は経済・財政面での窮状を脱したい希望に火をつけた。ハマスはガザ再建の責任だけでなく、パレスチナ問題の解決が遅れた場合の責任も負うことになる。

国際社会は、イスラエルによる包囲と封鎖を終わらせてほしいというパレスチナの要求を支持する一方で、イスラエルの安全保障問題にも取り組まねばならないと主張している。潘(パン)国連事務総長が警告するように、「危機の根本原因に対処しないかぎり、どんな和平努力も、ほとんど役に立たない」。

持続的な和平協定の達成には、双方の歩み寄りが必要だが、ハマスは譲歩にずっと抵抗してきた。国際社会は、パレスチナ問題を平和的に解決するためにハマスの関与を受け入れねばならない。

ペレス・イスラエル前大統領はかつて、「真の難題は、いかなる危機をも、行動を促す新たなチャンスへと転換させることだ。それがどんなに大きな危機であってもだ」と述べた。今こそ、イスラエル・パレスチナ間の紛争にかかわるすべての者たちがこの難題に取り組み、ガザに平和をもたらす具体的、創造的な行動を起こす時が来ているのだ。

ハマスは耐久力を証明してみせた。何十年も行き詰まりと停滞を経験した今だからこそ、ハマスは自らが生き延びることより、公正で永続的な和平達成に力を発揮できるのではないだろうか。

週刊東洋経済2014年10月11日号

ハイマル・アブサダ
Mkhaimar Abusada

ガザ・アル=アズハル大学教授。ガザ在住。米ミズーリ大学コロンビア校卒業。専門は政治学。

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