リクルートは"自らの限界"を超えられるか?

迫る「破壊的競合」を前に、隠れた”巨人”は…

「彼らは、別にリボン図を意識しているわけではない。50年後のリクルートを考えると、今ここを押さえないといけない」と今村氏は話す。

中でもLINEは、圧倒的なユーザーの支持を得て成長してきた。実際リクルートのリボン図のマーケット領域にも進出している。「LINE公式アカウント」や「LINE@」など、人と企業や店舗をつなぐようなサービスがそれだ。求人、旅行といったようなリクルートの既存事業に乗り出さないとも限らない。LINEの描く究極のモデルは、ユーザー同士、ユーザーと企業、店舗など、すべてをつなぐインフラになることだ。そういう意味でも、人と人、人と企業をつなぐマッチング、出会いを提供するリクルートのメッセージと似ている。

似ているということは、“危険”という言葉と同義だ。

通常、多くの企業は主力事業のカゲリが見えてから、慌てて動くことが多い。イノベーションのジレンマをおそれているとはいえ、過去最高の業績を上げるリクルートの何がそうさせるのか。

今村氏にその質問をぶつけた。しばらく沈黙が続いた後、今村氏は口を開いた。

「リクルートは『不相応採用』、『分不相応』な採用をする会社だと言っている。地頭がよく、成長意欲が高く、当事者意識を持った人を比較的多く採用する。そういう人間は、つねに今日の自分を超えたい、仕事の報酬を仕事で欲しがる。このままでいい、という考え方や発言をするのは、ダサいし、嫌だ、という気持ちがどこかにある。現状維持だと、仕事をサボっている感覚になる。新しいことをやったほうが、自分にも新しい筋肉がつくし、単純に面白い」

リクルートの営業マン、スタッフは、つねに「強がった目標」を置く。商品開発でも、つねに新しいことを目指す。それがリクルートの文化だ。業績が過去最高であろうが関係ない。つねにイノベーションを意識する。たとえ、自らのビジネスモデルを破壊しようが。

「創業時、“目指せ10億円、100億円”を全社のスローガンにしてきた。それだけで頑張っていた。その時代の人間は誰ひとり会社に残っていないが、おそらくそのDNAは残っている。つねに何か新しいことをやっていないと自分たちの存在意義はない。自分も成長しない。やりがいを感じない。今、社長の峰岸こそがいちばんその傾向が強い。えも言われぬリクルートの文化が、おそらくそうさせている」(今村氏)。

リクルートの創業以来、脈々と受け継がれてきたDNA、企業文化こそが、イノベーションのジレンマを克服しようとする最大の原動力となっている。

今、リクルートは、競合の出現をおそれ、イノベーションのジレンマを乗り越えようとしている。では具体的にどのような施策を採ることで新事業を生み出そうとしているのか。峰岸真澄社長直轄の組織がどう機能しようとしているのか。次回はその点をみてみよう。

※次回は10月24日(金)に公開予定です

(撮影:大澤誠、尾形文繁)

 

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