リクルートは"自らの限界"を超えられるか? 迫る「破壊的競合」を前に、隠れた”巨人”は…

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通常、優良企業は、自社のメイン顧客の期待や要望に応える形で、自社サービスの性能を高める新技術を取り入れ、成長していく。顧客が望まないような、かつ利益率の低いアイデアは排除される。こうした、従来サービスの性能を向上させるイノベーションを“持続的イノベーション”とクリステンセンは呼んでいる。

一方、従来サービスの市場や価値を破壊しかねないイノベーションが“破壊的イノベーション”。通常、破壊的サービスはシンプルかつ低価格であり、初めは市場でも収益性の低い顧客に使われる。そのため、優良顧客の意見に耳を傾け、収益性と成長率を高める新製品を生み出す努力をしているトップ企業は、破壊的技術への投資に出遅れてしまう。

メイン市場の顧客の期待にはとうてい及ばないような破壊的なサービスでも、明日には十分な競争力を持つ可能性がある。破壊的イノベーションが成長し、メイン顧客が求める品質を満たすようになると、優良企業の提供してきた従来サービスの価値は急速に失われる。結果、優良企業の事業は縮小してしまう。

市場の最上層まで上り詰めた優良経営企業が、ある種の市場や技術の変化に直面したとき、地位を守ることに失敗するプロセスだ。有名どころでは、コダックはデジタルカメラの登場に対応できず出遅れ、フィルム事業の壊滅的な縮小を余儀なくされた。

グーグル、LINEが競合!?

現状、リクルートの既存のネット事業は好調だ。時代を読み、早い段階からネット、スマートフォンに対応したメディアを増やした。その後は、「リボン図」のビジネスモデルを、そのままネット、スマートフォンにうまく展開することにも成功した。

リボン図とは前回記事でもリポートしたが、リクルートの根幹を支えるビジネスモデルだ。リボンの図の左側をカスタマー、もう右側をクライアントとみる。リクルートは、カスタマー(個人)とクライアント(事業者)とを自社メディアでつなげて、両者をマッチングすることで成長してきた。新聞、出版など多くのオールドメディア企業が苦しんでいる紙からネットへの移行も、リクルートは、既存サービスの性能や利便性を上げる「持続的イノベーション」で乗り越えてしまったと言えるだろう。

では、今後も万全かと言うと、そうはいかない。

グーグル、ヤフー、LINEに代表されるネット企業、ネットベンチャーなど新興企業が、「破壊的イノベーション」を起こす可能性を持っているからやっかいだ。リクルートが築き上げてきたリボン図のビジネスモデルそのものを破壊しかねない。

リクルートの武器は、強力な営業パーソンに支えられた巨大な営業網。豊富なデータを持ち、優秀で成長意欲の強い営業マンが、創業以来、リクルートを引っ張ってきた。ネット時代においても、依然、有効に機能している。

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