産業リサーチ(食品) 雪印、味の素が再編の震源に。JTの動きにも注目

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食品業界にあって近年最大の事件は、なんといっても雪印乳業グループの解体だ。
 2000年夏の雪印乳業の食中毒事件に続き、2002年1月には子会社雪印食品の食肉偽装事件が発生。売り上げ1兆円超を誇った巨大グループは、いまや往時の5分の1の約2000億円まで縮小を余儀なくされた。
 当初は世界最大の食品グループ、ネスレが再編にどう絡むかに注目が集まったが、国内農業への影響を懸念し、外資の本格参入を嫌った農水省の抵抗でそのもくろみは頓挫。代りに当時、雪印乳業と冷凍食品分野で提携関係にあった伊藤忠商事と、農協の全国団体である全農が中心的役割を果たすようになる。
 特に注目されたのは雪印アクセスをめぐる動き。同社はチルド物流の全国ネットワークで他を圧する優良・成長企業。すでに雪印乳業事件後から複数の商社へ株式がほぼ均等に売却されていたが、雪印食品事件で事態は一変。ビール会社を筆頭にチルド分野の強化を狙う食品企業が出資を争い、筆頭株主の座は伊藤忠商事が手にした。
 伊藤忠はこれと引き換えに瀕死の雪印乳業本体へも出資したが、同時に冷凍食品分野の提携関係は解消。一時は育児品分野で提携かと思われたネスレも動かず。雪印の首位転落の裏で2位の明治乳業、3位の森永乳業がそれぞれ順位を繰り上げた。
 一方、国内食品業界の雄である味の素も提携・合併を活発化させている。コスト競争力の強化を狙って分社化した油脂部門は、ホーネンコーポレーション、吉原製油と統合。国内首位だった日清製油が率いる日清オイリオグループを抜き去った。
 2002年末には業務用冷凍食品分野に強いフレックを買収。国内首位のニチレイ、2位の加ト吉を追い撃つ態勢が整った。国内に約900社がひしめく冷凍食品業界の再編は必至だ。
 今後の焦点は、売り上げ規模で国内最大であるJTの出方。1999年ごろから積極的に行ってきた国内食品関連企業の買収は一段落のようにも見えるが、アグリなど不採算部門から撤退し、食品のコアである冷凍食品、飲料の強化を急いでいる。世界最大の穀物会社カーギルなど外資各社の本格参入もささやかれる。まだまだ再編劇は続きそうだ。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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