小林:でもそのカンファレンスでは、ジェフ自身も挙手して質問するし、司会も「ジェフ」と下の名前で指名したりしている。こんなふうに成功した起業家と、起業家を目指す若者が近い距離で学ぶ環境があるなんて素晴らしいと思いましたね。シリコンバレーのエコシステムを見たような気がしました。こういうことを日本でもやりたいと思ったけれど、まだ僕は新人だったので、すぐできるわけじゃなかった。
それでしばらくしてから、C-NETがPCフォーラムというIVSと同じようなアメリカのイベント運営会社を買収したので、当時「C-NET Japan」の編集長だった山岸広太郎(現・グリー副会長)と一緒に、共同でやってみようと始めたのがNILSです。
PCフォーラムのコンセプトは招待制で、マーク・ザッカーバーグとか、ユーチューブのファウンダーなど経営者たちが、日常から離れたリゾート地で議論するというもの。NILSもそれに習いました。こういうカンファレンスは、たぶん日本で初めてに近いと思います。
IVSの時期には起業家が大移動
塩野:いまではIVSが開かれる時期になると、大量の起業家たちが北海道や京都へ移動するのが恒例になっていますけど。
小林:そうですね。昔は登壇者の滞在時間も短くて、スピーチが終わったらすぐ帰るような感じでしたけど、いまのIVSは僕らも参加者も2日間にわたって密度の高い時間にしようと思っているから、すごく有意義な時間になっています。
IVSもどんどん進化していますよ。アメリカに「DEMO」というイベントがありまして、これはデビュー前の起業家が8分間でデモンストレーションをするという若手起業家の登竜門。いま一緒にIVSをやってる田中章雄が、「NILSは面白いけど、ディスカッションしているだけだから、デモみたいにモノを見せたほうがいい」というので、2006年からDEMOの手法を取り入れました。これがIVSで行われている新サービスの発表会「ローンチパッド(Launchpad)」の原型です。
ローンチパッドというのは、もともとロケットなどの「発射台」という意味。優勝者には注目が集まるので、ファイナンスの場としても定着してきています。
日本にもそれまで「事業計画発表会」みたいなものはあったんですよ。でもそれは会社概要とか資本金の額とかダラダラしゃべっているだけで、持ち時間の30分を持て余してしまうような、イケてない会議。その点、アメリカは同じフォーマットだけど、コンパクトでスタイリッシュというんですかね。洗練されていて、明らかに全然レベルが違う。こういうことが日本でもできたら面白いんじゃないかと組み合わせてブレンドしていって、いまの進化したIVSに至るという感じですね。
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