不健全なユダヤの影響と米国をつなげる考えは、本来、典型的な右派の概念だ。ユダヤ人は国家への忠誠心がなく、排他的な根なし草的とされていたし、米国内の移民社会は本質的に根なし草だと見られていた。20世紀初頭の欧州の右翼国家主義者の観点では、ユダヤ人に支配された英米の資本主義は、民族と土地を結ぶ神聖なつながりを壊すものだった。
もしすべてのユダヤ人がアラブ人の抑圧に加担したのであれば、欧州に限らず世界のどこであろうと、ユダヤ人への攻撃は容認され、むしろ積極的に奨励すべきといえたかもしれない。
だが、西側諸国でそのような考え方をする人間は少数だと私は思う。大学にいたり、ブログを書いたり、生粋の反ユダヤ主義のイスラム過激派と一緒にデモに参加していても、社会の主流からは程遠い。
イスラム教は欧米に対する最大の脅威?
意外なことに、イスラエルの最も熱烈な支持者の一部は現在右派に見ることができ、極右にさえ存在する。また、けっこうな数が、極めて反ユダヤ的な背景を持つ政党に所属している。イスラム教に対する敵意もその一因だ。欧州の右翼の大衆主義者は、イスラム教を欧米に対する最大の脅威と考えている。イスラエル政府が厳しい手段でアラブ人を制圧していることを、彼らは当然称賛する。
だがイスラエルも、1948年の建国からの輝かしい数十年以降、大きく変化した。建国当初は、ポーランドやロシアの社会主義者によって運営される進歩的な国家として欧米左派から称賛された。だが、今日のイスラエルのリーダーの言動は、古い欧州の反ユダヤ主義者を連想させる。今支配的なイデオロギーは、武力的な色合いの強い一種の民族的な国家主義だ。現在のイスラエル支持者が反自由主義的であっても、何ら不思議ではない。
彼らは現在の世論を左派の反シオニストたちよりも強く反映している。今、世界は分裂が進み、人々は不安に駆られてより小規模で防衛的なアイデンティティを受け入れている。スコットランド、カタロニア、スンニ、シーア、クルドなどだ。戦後初期の国際主義の理想は急速に崩壊し、国や民族、宗教をベースとした部族感情が空白を埋めている。その世界市民主義(cosmopolitanism)が理由で軽蔑された人々が建国した国民国家のイスラエルが、この不気味な傾向の象徴となっているのは実に皮肉なことである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら