秋葉原は今 三宅理一著 ~現在進行形で変わる 秋葉原の地理・歴史案内
秋葉原は、駅前再開発によって高層ビルが林立するようになった。従来の無線、家電、パソコン、ソフトウエア、フィギュア、メイド喫茶等で知られるオタクの街から大きく変わり、東京でも有数のビジネス街として知られるようになってきた。本書はそうした再開発に自らかかわった著者による「アキハバラ案内-今と昔」である。
1日ほぼ40万人が乗降するターミナル駅にありながら「飲食店の数は異様に少なく、あっても立ち食いそばの類が一般である。来街者は飲食のことなどどうでもよいのである」と著者はこの街の特殊性から説き起こす。外国人(特にフランス人)による高い評価にも言及し、「ハリウッドやカンヌ、シリコンヴァレーと同じ意味で、すでに伝説化している」という。秋葉原は基本的に商売人の街であり、千客万来の気風を持っているため「世界から人が集まることは大歓迎」と応援している。
街並みは昔から混然としていたが、「通りの一つ一つに不思議な魅力」があり、それは再開発後の今も残っているという。秋葉原という地名、その読み方にも、江戸時代には神田佐久間河岸由来の歴史があり、明治に入って鉄道駅ができた頃には「あきばはら」とか「あきはのはら」と呼ばれていたことも紹介している。
戦後GHQによって電気部品業者が集められたという都市伝説を持つ、この街の主体者の移り変わりそのものが、日本の産業発展史と重なり合う。「今や街並みには中国語の垂れ幕があふれ、中国語の呼び込みがスピーカーから流れる」。インド人も目立つようになった。再開発によって、この街が「開国」したことは事実だ。多くの女性たちが姿を現すようにもなった。「秋葉原はまだまだ変化を続ける」ことは確かだろう。
みやけ・りいち
藤女子大学教授。1948年生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程を経て、パリ・エコール・デ・ボザール卒業。芝浦工業大学、リエージュ大学、慶応義塾大学、パリ国立工芸院で教鞭を執る。2004年から秋葉原再開発協議会顧問を務めた。
芸術新聞社 2730円 334ページ
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