部下の「うつ」をすばやく見つける本 横山美弥子著 大野裕監修
年間、1人あたり422万円--これは、従業員数100~999人規模の企業において、30代社員がメンタル不調により休職した場合の総コストだという。
現場でのダメージも大きい。苦しいのはうつ病になった本人だけでなく、上司もまた様々な悩みや組織からのプレッシャーを抱えることになる。上司がうまく対処できなければ職場のチームワークは乱れ、通常業務に支障を来すこともあるだろう。うつ病患者数が増えている中、うつ病で休職者を出さないことが色々な意味で低コストであることは言うまでもない。
本書は、管理職向けのメンタルヘルス研修を多く担当する産業カウンセラーの著者が、“部下にメンタル不調者を出さない上司になってほしい“という思いで執筆した指南書だ。上司として最低限必要な法律とうつ病の知識、心の不調者をすばやく見つける具体的な方法、お金をかけなくてもできる有効な予防策についてわかりやすく解説している。
休職者が出た場合の具体策まで言及しているので、もしもの時にも役立つだろう。
一般的に早期発見のサインと言われる3つのA「アルコール(酒)、アブセンティーイズム(遅刻や欠勤など)、アクシデント(ミスや事故)」が現れたときでは遅いと筆者は主張し、独自の予防策を提案する。産業カウンセラーならではの現場視点や具体例は参考になるはずだ。
疲れているのに休みをとらない、帰らない、疲れを感じない「3ない上司」や、安易にコーチングを実践したがる上司など、職場のメンタルヘルスを低下させる上司像には、我が身を重ねて反省する管理職も少なくないのでは。
多くの企業と関わってきた著者は、断言する。
「生き残れる会社というのは、(中略)“いざという時の人間関係が社内でしっかり構築できている会社”」。普段からの面談や職務共感を向上させる努力、相手の感情に配慮して働く「感情労働」を行うことが、うつ病の予防にも繋がると指摘する。
極論を言ってしまえば、上司に高いコミュニケーション力と管理能力があれば、うつ病社員は出ないということだろう。
単なるうつ病対策マニュアル本ではない。
中経出版 1470円
(フリーライター:佐藤ちひろ =東洋経済HRオンライン)
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