産業リサーチ(化学) 汎用樹脂製品の統合・再編が一段進行

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機械・家電製品の筐体や部品をはじめ、食品包装容器やレジ袋、建設資材などわれわれの生活のあらゆる場面で使われる基礎素材を幅広く提供する化学業界。2000年の石油化学の出荷額は8兆2000億円に達し、プラスチック製品や化学繊維製造など周辺まで含めると24兆5000億円にも達する。
 石油化学製品の動向は基礎原料であるエチレンの生産をみるとわかりやすい。というのも、このエチレンをもとに合成樹脂や合成繊維が生産され、それが原材料として、自動車や電機をはじめとしたあらゆる産業に供給されるからだ。
 2001年末の国内エチレン生産能力は推計740万トン程度。しかし実際の生産量は1999年の768万トンをピークに2002年には715万トンまで低下した。電機やOA機器などで使われるポリスチレン出荷量が、これまで一〇〇万トン程度で推移していたのが、2001年に90万トン割れとなったからだ。ここ数年、自動車や電機各社が中国などへ海外生産シフトを加速、国内需要が落ち込んだことが響いている。
 これまで国内需要が落ち込んだときは輸出シフトで凌いできたが、中国での大型エチレン設備のほか、中東でコスト競争力の強いエタンベースのエチレン設備が今後数年のうちに相次いで稼働する見込みで、そうもいかない。さらに汎用樹脂の輸入関税が2004年まで段階的に引き下げられるため、輸入品流入が増えると見込まれる。石油化学各社は生き残りのための事業統合・再編を迫られているところだ。
 これまでも、業界は設備過剰の解消を目指して事業統合や再編を行ってきた。特に1990年代中盤には再編第一幕が上がり、生産会社・グループ数は1994年9月と2002年7月時点ではポリエチレンで14社から9社、ポリプロピレンで14社から5社へとかなり絞り込まれた。
 2003年4月にはポリスチレンで三菱化学と旭化成の事業統合会社に出光石油化学が合流、PSジャパンが始動した。さらに2003年9月に三菱化学を軸としたポリエチレンやポリプロピレンの事業統合が実現する。塩ビ樹脂も呉羽化学が東ソーの子会社・大洋塩ビへの営業譲渡・撤退を発表している。構造的な国内需要の停滞が背景にあるだけに、今後もこうした事業統合・再編が起こるだろう。
 一方、2003年10月に予定されていた三井化学と住友化学工業の事業統合は白紙撤回された。国内石油化学、基礎化学品に強い三井とシンガポールでの石化コンビナート展開や高収益の医薬・農薬が稼ぐ住友の組み合わせは、重複する事業分野が少なく「ベストな組み合わせ」として評価が高く、統合によるシナジー効果への期待は大きかった。しかし、この統合見送りは異なる強みを持つ2社が事業統合する難しさを示すこととなった。これからは「会社全体」での事業統合は難しいとしても、個別事業単位ごとでの事業再編を模索することになりそうだ。なお、三井と住友の事業統合を前提として、2002年4月に両社のポリエチレン、ポリプロピレンを事業統合した三井住友ポリオレフィンは当面、現状のまま営業を続ける予定だ。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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