永遠の課題「やる気欠乏症」をどうする? 「カネ」や「好き」だけでは長くは持たない

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思いこめるかどうかが、分かれ道に

取材した広告業界で営業部長をしているGさんは

「営業現場で仕事している時期は、いい提案ができて、クライアントから高い評価を得るため、夢中で仕事をしていました」

とのこと。まさに営業現場の仕事が「好き」で自然と動機づけ(モチベーションの維持)ができていたのでしょう。ところが、マネジャーに昇進して部下のマネジメントをすることになったとき、モチベーションの維持に苦慮したことがあったようです。

直接、クライアントを担当しないで部下の指導をすることが役割に変わったのですが、その役割に面白みを感じなかったのです。自分が担当してしまったほうが、いい結果が出る。クライアントを訪問しても、クレーム処理とか敬意訪問とか、自分の存在価値がある仕事をしている気になれない。と、ネガティブなことばかり考えてしまいました。このままではまずい。何とかしなければいけない……とGさんは対策を考えました。そうして取り組んだのが

《クライアントにいい提案ができる組織力の向上が、モチベーションの源泉》

と自分に言い聞かせたのです。ときには念仏のようにつぶやいたり、部下の前で口に出して発信したりすることもありました。すると時間の経過とともにマネジャーの仕事に動機づけができるようになっていきました。ちなみに、Gさん曰く

「仕事で好きなことだけやっているのは無理ですね。自分から動機づけする努力が必要と思えるようになりました」

このようにモチベーションの設定は「好きだから」と行えるものとはかぎらず、役割に応じて「思い込んだり」でやる気を引き出すことが必要な場合もあります。

そもそも、仕事を好きだからする、高いモチベーションを維持できると考えることには無理があります。あくまで仕事は金銭欲求を満たすモチベーション1.0(マズロー的には第一段階)の土台の上に乗っかっているもの。ときには思い込みによって、2.0から3.0まで広げていく覚悟が必要。それができるか? 仕事において、活躍し続けるための重要な分かれ道が、そこにあるのかもしれません。
 

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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