また「大量生産・大量販売」の時代は、標準商品をキッチリとスケジュールどおり作る必要があるので、同じ価値観を持つ均質化した人材が大量に必要になる。異なる価値観を持った人材は、むしろ敬遠されて当然だった。
しかし時代は変わった。インターネットや物流といったインフラが発達し、個人が力を発揮しやすくなっている。
コーヒーの世界においては、「量より質」を優先したいと考える小規模ロースター(焙煎業者)が、コーヒー農家と直接交渉して高品質なコーヒー豆を入手することが可能になり、ダイレクトトレードと呼ばれるコーヒー農園からの直接調達が生まれている。
小さな会社や個人でも、必要な経営資源を持てるようになったおかげで、これまでの標準化・均質化された「質よりも量」の世界から、多様性と個性を尊重した「量よりも質」の世界に、世の中全体が“進化”しているのだ。
ダイバーシティは、人間の根源的欲求につながっている
この変化に対応すべく、企業の人材にも多様な価値観が求められるようになった。現代の仕事の多くは知的労働であり、さまざまなアイデアを生みだすことが求められる。そしてアイデアは、多様な価値観が行き交う場で生みだされる。だから、今ダイバーシティと連呼されるのだ。
これまでの大企業は、大きな企業規模を維持するために市場を独占することを考えてきた。しかし中小企業や個人の場合は、市場の独占を狙う必要はない。むしろオープン&シェアの精神で、よいものは教え合い、協業を通じて共により価値が高いものを作っていくほうが合理的だし、自身の願望に沿った形で、よりよい社会を創っていくことができる。
多くの人が忘れかけていたことだが、そもそも人間は均質ではなく、一人ひとり、好みも価値観も異なる。「個性と多様性の追求、オープン&シェア、透明性」は、単なる流行ではない。人間が本来持っている、根源的な欲求に根付いたものなのである。
コーヒーのサードウエーブブームは、こうした文脈の中で考えてみると、重要な意味を持っていると言えるのだ。
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