混迷政局と日本経済のゆくえ--水野和夫×塩田潮
衆参の「新ねじれ」を生んだ参議院選挙、そして民主党政権1年。日本経済のゆくえはどうなるのか。マクロ的な視野で世界経済の動向をとらえる、気鋭のエコノミスト、水野和夫氏と、徹底した取材と鋭い切り口で政治を読み解く作家、塩田潮氏に、それぞれの専門分野からの見解を語ってもらった(対談は7月30日に実施)。
「成長」モデルの行き詰まりが政権移行につながった
--水野さんは、現在の経済の状況をマクロ的な視野で見て、「成長」が前提の近代化の構造が崩壊したことを説いていますね。
水野 欧米の先進国は経済成長することで成り立っている社会です。右肩上がりの成長が止まってしまった現在、その仕組みがもう機能しなくなったと思うのです。そもそも近代社会というのは、全員が豊かになれる仕組みではなかった。安い資源、特に原油を使って先進国だけが経済成長を成し遂げてきた。それが崩れ去ったわけです。厳密に言えば70年代にすでに限界に達したのではないでしょうか。
「成長至上主義」とは、別の生き方をしない限り、地球上の60億人全員が不幸になるということだってありえます。良し悪しに関わらず、近代の成長至上主義から卒業しない限り、次の段階には行けないと思うのです。
塩田 僕は終戦の翌年に生まれて、東京オリンピックのときに高校時代を過ごすという成長至上主義のような時代を生きてきたので、日本の経済成長を外して考える水野さんの見解は目から鱗が落ちるな驚きがあります。昨年まで政権の座にあった自民党の政策にはつねに成長を意識し、低成長だと成長の促進、マイナス成長だと成長の復活を唱えてきました。
90年代に入り、バブルと冷戦という2つの「崩壊」で自民党政治の終焉を感じました。バブルの崩壊は、成長演出政党の終焉、冷戦の崩壊は西側自由主義政党の役割の終わりを意味した。自民党は次の役割が見つからず、試行錯誤を繰り返しました。