600万部の数字ではテレビでは打ち切りに--『人生で大切なことは全部フジテレビで学んだ』を書いた吉田正樹氏(吉田正樹事務所代表、元フジテレビ・プロデューサー)に聞く
--ご本人はなぜ辞めたのですか。
テレビ人という魂はまだ持っていたいが、今のテレビ受像機と放送の設備にとらわれないで、もっと違うテレビができるのではないかと思っている。インターネット時代になっても、テレビ制作者という大衆に何かを発信していく人はずっといるはず。マイナーなものからメジャーなものをつくっていくことを続ける。しかし、テレビ番組と呼ばれる今の仕組みは変わっていくしかないという気がしている。そこで、テレビ局から自由になったほうが、これからのテレビをつくれるのではないかと考え、フジテレビを辞めた。
--テレビはどうなると。
テレビはもはや自分を否定しないとテレビのままでは生き残れない。広告主が宣伝媒体はテレビでなくていいと言い出している。広告という目的からは、別にテレビでなくていいだろう。ただ、これほど同時に大勢の人に見せられる装置はない。
過去にいちばん売れていた『週刊少年ジャンプ』はたかだか600万部だ。たかだかといってしまうのは、とてもテレビ的な感じだが、テレビで言えば600万部は視聴率6%で、こんな数字では来週には打ち切りの憂き目にあってしまう。テレビでは3000万人が見ていないと、当たったという感じはない。テレビの大ヒットとは翌日、日本中のあちこちで見た見た、すごかったねと持ちきりになること。そうできる装置はテレビ以外にない。だからこそ、今の免許をいただいてぬくぬくとやっていることに対して、あえてアンチテーゼをぶつけたい。
--実際の事務所の業務内容は。
コンテンツやソフトをつくるコンサル業、ウエブやネットの仕事が多い。電子書籍を映像系と文字コンテンツを融合して何かやってみたいというのが一つ。広告の場として、今まではテレビが圧倒的だったが、同じぐらいのパワフルな破壊力を持つコンテンツがウエブ上でできないかと考えている。