2022年の円安シナリオの死角は「ドルの需給」 膨張するアメリカの経常赤字とドル相場の関係

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こうした需給面の論点に加え、FRBの正常化プロセスに関しては既にイールドカーブのベアフラットニング、すなわち短期金利は上昇しても長期金利の上昇は鈍いということが示唆するように、順当に連続した利上げはできないという市場の思惑も濃くなっている。2022年のドル円相場は、こうした「需給・金利両面からのドル売り圧力」と「『日本回避』をテーマとする円売り圧力」の綱引きというイメージになる。

ドルが売られても円は買われないかも

しかし、2021年の円安の理由があくまで「日本の劣後(日本回避)」だったとすれば、相場全体がドル安に傾斜しても必ずしも円高になるとは限らず、実際、2021年4~6月期はそうだった。そこには「ドルは手放したいが、円を買う理由はない」という市場参加者の胸中が反映されていると筆者は考えている。

冒頭でも言及したように、そうした「とりあえず日本は回避する」という流れを大きく変えるだけの執政を政治に期待するのは、現政権の動きを見る限り、2022年も困難であるように見受けられる。引き続き円売り優勢の地合いを予想して投資することが報われやすいというのが筆者の基本認識である。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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