フランス大統領選挙、候補者たちの熾烈な争い 3つのシナリオとそれぞれがはらむ問題を分析
前回選挙では選挙戦が本格的にスタートして以降、主要候補の公金横領疑惑が浮上し、世論調査は大きく変動した。
ただ、今回は上位4候補とそれに続く他候補との支持率の差は大きい。かつての政権与党で党勢低落が著しい中道左派(フランスの政治用語では左派)・社会党のアンヌ・イダルゴ候補、環境政党・欧州エコロジー=緑の党のヤニック・ジャドー候補、前回選挙の初回投票で4位につけた極左政党・不服従のフランスのジャン=リュック・メランション候補の間で左派票が割れ、左派は候補者一本化もできそうにない。決選投票に進出する可能性があるのは前述の4候補に絞られよう。
2021年に各党の支持は目まぐるしく変動している。当初はルペン候補がリードしていたが、ゼムール氏の出馬で極右票が割れ、マクロン大統領に逆転を許した。フランス国民の間で極右大統領誕生への警戒は根強く、前回の決選投票ではマクロン氏が反極右票を集めて圧勝した。ルペン氏は今回、ユーロ離脱などの極端な主張を封印し、支持層拡大に努めてきた。だが、新たな極右候補の登場で、ルペン氏の政策穏健化に不満を持つ有権者がゼムール支持に流れている。
極右ではルペン氏を追い上げるゼムール氏
ゼムール氏の支持基盤は極右だけにとどまらない。ゼムール支持の有権者に、前回選挙でどの候補に投票したかを尋ねると、28%のルペン候補とほぼ並ぶのが、共和党のフランソワ・フィヨン候補の27%だ。伝統的な中道右派政党のフィヨン氏を支持した有権者がルペン支持に転向した割合は少ないが、ゼムール支持に転向した割合は多い。
ゼムール氏は代表的な右派系新聞フィガロの政治記者などを経て、作家やテレビのコメンテーターとして長年活躍してきた人物だ。反移民、反イスラム、治安強化、フランスのアイデンティティ回復などを訴えている。人種差別的な発言が物議を醸すことも少なくないが、歴史や古典への造詣が深い知識人としての一面も持つ。
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