9年ぶり公邸入居、岸田首相襲う「不吉なジンクス」 安倍氏と菅氏は回避、「幽霊が出る」うわさも

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岸田首相は、臨時国会での予算委審議を控えた週末の12月11日に、官邸に隣接する首相公邸に入居した。10月4日の首相就任以降、官邸と約400メートル離れた赤坂の衆院議員宿舎から通勤してきたが、自らの意思で「職住一体」を決断した。

現在の公邸は旧官邸を曳家(ひきや)・改築したもので、小泉政権後半の2005年夏前から供用を開始した。入居の可否は時の首相の意向次第だが、公邸の維持管理には年間約1億6千万円の経費が必要とされ、入居しなかった首相には「税金の無駄遣い」「重大危機にトップが即時対応できない」などの批判が絶えなかった。

現在の公邸になった小泉政権後、第1次政権の安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の3氏、続く民主党政権では鳩山由紀夫、菅直人、野田の3氏と、計6人の首相が連続して入居した。しかし、2012年暮れに第2次政権を発足させた安倍氏は、東京・富ケ谷の自宅から、続く菅義偉氏も議員宿舎から官邸に通い、公邸入居を避けた。

安倍氏は「自宅のほうが、心身の休養、充電ができる」ことを理由とし、菅氏はメディアの取材が困難な議員宿舎での有力議員や民間の相談相手との密談を重視して、議員宿舎住まいにこだわったとされる。

これに対し岸田首相は、「就任当初から公邸への引っ越しを検討してきた」(側近)。職住一体化による危機管理強化が主目的だが、赤坂の繁華街にある議員宿舎からの通勤による警備陣の負担を公邸入居で軽減させたいとの「岸田流の気配り」(同)もあったとされる。

安倍氏「冬はすきま風で寒く、風邪を引きやすい」

首相官邸ホームページによると、現公邸は鉄筋4階建ての洋館で、延べ床面積は7000平方メートルにも及ぶ。大小多数の部屋があり、旧官邸時代に海外要人をもてなした大ホールも健在だ。ただ、首相の居住スペースも広いため「冬はすきま風で寒く、風邪を引きやすい」(安倍氏)との欠点も指摘されていた。

さらに、旧官邸は、1932年の「五・一五事件」で犬養毅首相が、1936年の「二・二六事件」では岡田啓介首相の義弟が殺害されたという歴史的惨劇の舞台でもある。旧官邸が歴史的建造物として一部改修だけで現公邸に引き継がれたため、一部には銃弾の跡などが残り、当時の殺害現場や旧官邸の庭などで軍服姿の幽霊が出るとの「都市伝説」(安倍氏)が語り継がれてきた。

旧官邸時代の2000年に公邸に入居した森喜朗元首相は、当時のメディアの取材に対し「寝入りばなに寝室のドアノブを回す音が聞こえたので、『誰だ』と大声を出し、ドアを開けたら、暗闇の廊下を(幽霊が)走り去る音が聞こえた」と首をすくめた。

また、1994年に羽田孜元首相(故人)が公邸入りした際は、噂を気にした綏子(やすこ)夫人が霊能者に頼んでお祓いをしたという逸話も残る。公邸入りを嫌った菅氏も、官房長官時代に「そういえばそんな気もする」などとあえて幽霊伝説に言及していた。

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