JR東社長「運賃値上げ、ローカル線、すべて話そう」 鉄道から小売まで語り尽くす長編インタビュー

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一方、お客様にどう乗っていただくかも考えなくてはいけない。東京から観光やビジネスで地方に向かう旅客は一定程度戻りつつあるが、地方から東京に向かう旅客はまだ半分も戻っていない。東京の感染者数が多かったせいか、東京に向かうことを躊躇している顧客が少なくない。

ふかさわ・ゆうじ/1954年生まれ。1978年東京大学法学部卒業、日本国有鉄道入社。1987年JR東日本入社。投資計画部長、人事部長、副社長などを経て2018年から現職(撮影:尾形文繁)

われわれは安全な旅をしっかりと提供していく。ほかの鉄道会社やレジャー施設運営会社、旅行会社と連携し、東京で安心な旅ができるような雰囲気の醸成や具体的な商品作りを年明けからぜひ進めたい。新型コロナの感染はこれからも拡大、減少を繰り返すと思う。それに合わせて適時、適切にいろいろな施策を打っていく。

もう1つ重要なのはオフピークだ。過去30年にわたって全交通手段に占める鉄道の比率は上昇してきたが、コロナ禍で首都圏では鉄道の比率が下がって、自動車や自転車に流れてしまった。混雑車両の3密が警戒されているためだ。

当社も窓開けや消毒などの対策をやっているが、それだけではなく、密を減らすことが重要だ。その対策の1つがオフピーク通勤へのシフトだ。

Suica(スイカ)通勤定期券を使った時差通勤で、ポイントが貯まるサービスを2021年3月から始めた。今のところ顧客の約5%がシフトしているが、それだけでは足りない。もっとシフトしてもらうには定期運賃という基本を見直さないといけない。

オフピーク時間帯の運賃を下げればオフピークに移ってもらえるが、今の当社の状況では運賃を下げるだけでは経営が持たない。オフピークの運賃を下げると同時に、薄く広く全体の運賃を上げてプラスマイナスゼロになる新しいオフピーク定期を作りたい。現在、国と協議を続けている。

値上げとピークシフトは別物

――鉄道各社の中には運賃値上げを模索する動きもあります。

運賃値上げの議論と当社が行っているピークシフトの議論は別物だ。運賃値上げの議論もやっていくが、運賃値上げは現行制度の根幹まで踏み込むので、決着までに時間がかかる。

一方でピークシフトは考え方の根幹を変えるわけではない。値上げではなく、あくまでプラスマイナスゼロ。コロナ禍で突きつけられた目の前の課題を解決するための施策であり、今のタイミングでやらないと意味がない。

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