スタバとタリーズ「超人気福袋」に見た流儀の違い 日本の風物詩に注力「店に来てほしい」思いは共通

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一方のスターバックスは限定販売で、倍率(非公表)は高い。これは「この時期ならではの運試し、わくわく感をお届けしたい」(後藤さん)という企業方針からだ。

これには限定品を手に入れて高値で転売を行う「転売ヤ―」対策もある。スタバも2016年に東京・二子玉川の店舗で、先頭グループに買い占めされた経験がある。翌年に購入数を制限。2018年から前述のオンライン事前抽選に切り替えた。

福袋の販売手法はオンライン申し込みとなったが、中身の定番・ドリンクチケットに象徴されるように「店に来ていただきたい」のが本音だ。その思いは両社に共通する。

「当たらぬも八卦」でなく、失敗したくない

ところで食品メーカーを取材すると、「最近の新商品は味がイメージできないと売れない」という話を聞く。100円や200円の商品でも「失敗したくない」消費者意識は強い。

福袋の中身でいえば、かつては各業界の福袋に“外れグッズ”があった。

その昔に福袋を買った人の中には、サイズの合わない衣服や使い勝手に困るアクセサリーが入っていた経験を持つ人もいるだろう。販売側が売れ残り品を入れることも多く、占いではないが「当たるも八卦当たらぬも八卦」。多少の外れなら許された時代でもあった。

今はそうはいかない。消費者が賢くなったのだが、中身を開けるときのワクワクやドキドキ感は減った。スタバは福袋にその要素を残し、タリーズは消費者に失敗させない配慮を行う。どちらが良い・悪いという問題ではなく、これもまた方針の違いといえそうだ。

スターバックスが日本に上陸して1号店を開業したのが1996年、タリーズは1997年だ。日本市場の定番カフェとなった両社が、日本の年末年始の風物詩にここまで注力するのも興味深い。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 

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