「吉田調書報道取り消し」で朝日は傷だらけ 他にも求められる特ダネの検証
朝日新聞が、東京電力福島第一原発の故吉田昌郎元所長に対する政府事故調の聴取記録、いわゆる「吉田調書」をめぐり、「所員が命令違反で撤退した」などと報道したのは誤りだったと認め、記事を取り消す方針を明らかにした。
木村伊量社長は編集部門の抜本改革が終わるまで社長報酬を全額返納、その後に進退を決断するという。事実上の引責辞任表明だ。先月、検証記事を掲載した慰安婦報道についても謝罪、関連していったん掲載を拒否した池上彰氏のコラム問題も尾を引くなど、傷だらけの朝日は、解体的な出直しが迫られる。
違和感のあるスクープだった
9月11日の2時間近くにわたる会見で、今回の誤報の原因について木村社長と編集担当の杉浦信之取締役が繰り返したのは「記者の思い込み」と「記事のチェック不足」が重なったという認識だ。
「命令違反で撤退」と報じた主な根拠は、吉田氏が「所員に福島第一(1F)の近辺に退避して次の指示を待てと言ったつもりが、福島第二(2F)に行ってしまった」と語ったとされる調書の証言などだ。
しかし、調書では続けて「伝言ゲーム」のように所員に正確な指示が伝わっていなかったことや、「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思った」と、前言を翻すような吉田氏の発言も出てくる。
これらは「フクシマ・フィフティーの真相」と題された朝日新聞デジタル版の記事には当初から盛り込まれていた。まずデジタル版を読み、続いて当日届いた朝刊紙面を手に取った私のような読者は、「所長命令に違反 原発撤退」の大見出しに初めから違和感を覚えたはずだ。
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