暗号資産に熱狂する人が醒める奇怪な騒動の行方 初期投資家にコイン配布されず市場外取引疑惑も

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さらにY氏はこうも語る。

「この日は自分以外にも顧客が集まっており、相当額が集金されたと思います。そのとき、間に入った人間から『最低半年、価格が上がるまで現金化してはならない』と言われたり、契約書にも『いつまでは売ってはならない』という旨の条項が入っていたりした。一定期間を過ぎないと売ってはいけない代わりに、市場より安く販売しますよという話でした」

ただ、実際にはすぐに売り飛ばす人も多数いたもようで価格はどんどん下がり、80円くらいだったXはあっという間に1円台にまで暴落してしまう。

「真っ青になりました。私のようなC社との約束を守った人はもちろん、取引所でXを買っていた個人投資家も大損害を被ったはずです」(Y氏)

違法な取引の可能性も

Y氏と前出の50代男性の話を総合すると、ICOを持ちかけたのも、10円での相対取引を持ちかけたのも、C社ないしC社に連なる会社だった。会社謄本を調べたところ、X社とC社は同じ住所に登記しており、その関係性は奇妙に映る。

これについてX社に問い合わせたところ、「当社と登記上の住所を同じくするC社は、当社の種類株主。当社はC社との間で事業資金の提供において取引関係がある」としつつ、C社を巡るトラブルについては「承知していない」と回答してきた。

だがX社について、複数のブロックチェーン業界関係者からは次のような評判も聞こえる。

「開発陣がテスト環境をそろえるための設備としてすさまじい金額を投じてしまったため、ICOで集めたお金がなくなり、プロジェクトが頓挫しかけたと聞いています。5月に行ったとされる10円での市場外取引が事実ならば、運転資金の捻出が目的だったのでは。Xは別のプロジェクトのファウンダーに救済を求め、相当枚数を売ったという話も聞いています」

事の経緯を確認すべく、4回にわたってX社に問い合わせたところ、担当者名を明かすことなく「当社もしくは当社の関係会社等においてICO・暗号資産の販売を行っておりません。当社の名をかたって暗号資産を違法に販売する行為があれば、当社としてもしかるべき対応を取ってまいります」と繰り返すばかり。またC社にも複数回取材を打診したが、返答を得られることはなかった。

金融事件などに詳しいタイラカ総合法律事務所弁護士の平山剛氏が語る。

「無登録・無届出でこうした行為を行った場合には、金融商品取引法違反、あるいは出資法違反に問われる可能性があります。また改正資金決済法に触れる恐れもあるでしょう」

仮想通貨をはじめ、NFTやメタバース関連への投資熱が沸騰する陰で、こうした不可解なトラブルが続発している。投資家に対するしっかりとした説明がなされない限り、仮想通貨自体に対する信用も失いかねないといえそうだ。

根本 直樹 ライター

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ねもと・なおき  / Naoki Nemoto

1967年生まれ。立教大学文学部仏文科中退。その後『週刊宝石』記者を経てフリーに。主に暴力団や半グレなどアンダーグラウンド分野の取材・執筆活動を続けている。

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