「ミスに厳しい職場ほどミスが多い」のはなぜか 対立ない人間関係には「心理的安全性」が重要

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心理的安全性を高める7つの行動

では、リーダーは場の心理的安全性を高めるために、何をすればいいのでしょうか。エドモンドソンは、7つの行動を提唱しています。

・直接話のできる、親しみやすい人になる
・自分もよく間違うことを積極的に示す
・失敗は学習する機会であることを強調する
・現在持っている知識の限界を認める
・参加を促す
・具体的な言葉を使う
・境界(規範)を設け、その意味を伝える

最後の「境界(規範)を設ける」について、彼女のたとえを引用します。

「規範は、橋に設置されたガードレールのようなものだ。ガードレールがなければ、車はセンターラインの近くに寄せて走るだろう。ガードレールが設置されていることで、追い越し車線を走れるのだ。心理的安全性を担保するための規範は大切で、それを考え、意味とともに伝えるのはリーダーの大切な役目である」

これまでは「リーダーは強くあるべき」というイメージが一般的でした。確かに、強敵と戦うとき、逆境に立ち向かうとき、信念と勇気を持って率いてくれる存在は必要です。しかし近年では、それとはまったく別の勇気が必要になりました。

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それは、悩みや弱みも含めた「素の自分を見せる勇気」です。実はリーダーも上司や部下からの評価の目にさらされており「なめられてはいけない」「弱いリーダーと思われてしまう」「部下を統制するのにマイナスになる」というメンタルモデルを持っていて、その思い込みがチームの生産性を下げてしまっています。

リーダーが弱さを見せることでメンバーは安心し、弱さを開示するようになります。「下手なことをいうと評価を下げられてしまう」という恐れが減衰し、「この場は強がらなくてもいいんだ」という安心感が生まれるのです。

強がっている人間同士で、思いやりや助け合いが生まれることはありません。お互いの得意や不得意がわかることで、はじめて「それだったらわたしがこれをできるよ」という関係性が生まれてくるのです。

みながスーツを着てキリッとしているビジネスの会議で、強がらない姿勢を見せるのはとても勇気のいることです。だからこそ、影響力のあるリーダーから、強がりの仮面を外してみましょう。

ピーター・ドラッカーは1973年の著書『マネジメント』のなかで、「リーダーに任命してはいけない人物」として5つのポイントを挙げています。

・人の強みよりも、人の弱みに目を向ける者
・何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者
・真摯さよりも頭のよさを重視する者
・部下に自分の地位を脅かされると脅威を感じる者
・自らの仕事に高い水準を設定しない者

彼の提示した人物像は、まさに心理的安全性を下げ、チームの総合力を奪うリーダーです。そうではなく、熱意あるコミュニケーションが促進される態度をとる。すべてのメンバーが尊重されていることを示す。

未来に向けたメッセージで場に希望をもたらす。そんな「場に安心をもたらせる人」にリーダー自身がなることで、職場の人間関係を改善していけるのです。

斉藤 徹 起業家、経営学者、研究者 ビジネス・ブレークスルー大学教授

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さいとう とおる / Saito Toru

日本IBMを経て、2005年にループス・コミュニケーションズを創業。ソーシャルシフト提唱者として、知識社会における組織改革を企業に提言する。2016年に学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。2020年からはビジネス・ブレークスルー大学教授として教鞭を執る。2018年には社会人向けオンラインスクール「hintゼミ」を開講。卒業生は1000名を超え、大手企業社員から経営者、個人にいたるまで多様な受講者が在籍。企業向けの講演実績は数百社におよぶ。組織論、起業論に関する著書も多い。
株式会社hint代表。株式会社ループス・コミュニケーションズ代表。

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