「ミスに厳しい職場ほどミスが多い」のはなぜか 対立ない人間関係には「心理的安全性」が重要

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例えば、経営学者のエイミー・エドモンドソンは、世界の職場において共通した「職場で言ってはいけない暗黙のルール」があると示しました。

・上司が手を貸した可能性のある仕事を批判してはいけない
・確実なデータがないなら、何も言ってはいけない
・上司の上司がいる場では、意見を言ってはいけない
・他の社員がいるところで、ネガティブなことは言ってはいけない

これらの多くは上司の面目を潰さないためであり、さらにいえば、いい評価、いい人間関係を維持するための防衛本能です。実際の職場では、組織で賢く振る舞う知恵として、暗黙的に奨励されていることも少なくありません。

そのため、上司と部下には「発言と沈黙の非対称性」が生まれてしまいます。上司は「何でも言える」と感じているが、部下はいろんなことを気遣っている。上司には部下の不安が見えないのです。

特に、優秀な成績をあげて、挫折を知らずに高い立場についた上司は、部下に厳しい言動をする場合が多く、無意識に場の安全性を壊しているケースが多いのです。優秀なリーダーは、自分を律することで成績を上げてきた成功体験を持っており、そこから「組織も厳しく律すれば成果を出せるはず」と思いがちだからです。

リーダーが陥りやすい典型的なクセとは

ヘンリー・ミンツバーグは著書『MBAが会社を滅ぼす』にて、MBAホルダーは論理に偏り、人への共感を失いがちで、知識と行動のバランスが崩れやすいと警鐘を鳴らしています。ここで、優秀な人材ほど陥りやすい、典型的なリーダーの思考のくせを4つほど挙げます。

・完璧主義:他者のすべての行動に完璧さを求めたい
・コントロール欲求:他者の思考や行動を自分の統制下におきたい
・過度の所属欲求:同じ価値観や意見を持ち、一体感ある仲間でいたい
・犯人捜しの本能:悪いことが起きると、犯人を捜して非難したい

イラスト:チームdot

なかでも「犯人捜しの本能」は、場の心理的安全性を激しく毀損する思考ですが、ほとんどの組織において「正しい行動」として理解され、定着しています。特に、規律を重んじる生真面目な業界、コンプライアンスを過剰に重視する組織においては、「犯人を捜し、責任をとらせ、再発を防止すること」こそ問題解決の最善手と考える傾向が強く、非常に根が深い問題といえます。

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