スズキ「新型アルト」が問う軽自動車の存在意義 7年ぶりの大刷新、若い女性ユーザーの獲得狙う

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新型アルトにはアルトで初めて「マイルドハイブリッド」が搭載されたグレードが加わる(写真:スズキ)

「アルトは今日に至る軽自動車の基本を築いた車。今回の新型モデルも軽のベーシックとしてしっかり売っていきたい」

軽自動車大手のスズキが、廉価車種アルトのフルモデルチェンジを発表した。2014年以来、7年ぶりの全面刷新だ。車両価格は94.3万円(消費税込み)からで、12月22日から販売を開始した。披露会見の場で鈴木俊宏社長は、庶民の足として、アルトの意義を強調した。

新型車ではデザインや内外装を一新。外観は丸みを帯びたデザインに変更し、内装の質感も高めた。安全装備も先代モデルよりも充実させ、夜間でも歩行者を検知して作動する自動アシストブレーキや6つのエアバッグを標準搭載している。

また、従来からのエンジン車に加え、加速時に電動モーターがサポートしてガソリン消費を抑える簡易式のハイブリッド車タイプも用意。ハイブリッドは最低車両価格が109.7万円と15万円以上高くなるが、ガソリン1リットル当たりの走行距離が27.7km(カタログ燃費のWLTCモード)と軽自動車でトップの燃費性能を謳っている。

スズキの成長支えた廉価車種

スズキにとってアルトは特別な車だ。初代アルトの発売は40年以上前の1979年。当時、軽自動車業界は排ガス規制導入とオイルショックで急激に需要が冷え込み、大きな危機に立たされていた。

こうした中で、スズキは中興の祖となる鈴木修氏(現相談役)が1978年に社長に就任。自ら新車開発の陣頭指揮をとった修氏は開発部隊に徹底的にコストを削らせ、47万円で「アルト」を発売。当時の他の軽自動車と比べて2割以上安く、その価格設定に世間は驚いた。

当然、内装などの仕様は極めて質素だったが、地方で暮らす主婦や単身女性が買い物や通勤、子供の送り迎えなどに使う車などとして大ヒット。その後もモデルチェンジを重ね、これまでの国内累計販売台数は526万台に及ぶ。中小企業だったスズキを大企業へと成長させた車種であると同時に、国内で軽自動車が本格普及する起爆剤になった車でもある。

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