いったん帰国してから、再び博士課程への留学で、1971年に再渡米した。その期間中に、日本の地位は大きく上昇した。
1971年8月15日に、ニクソンショック。そして、1973年には固定為替制度が放棄されて、変動為替レートとなった。
西独の通貨マルクが変動し始めたのは、ちょうど国際経済学の時間中だった。
学生の1人が、"The Mark is floating"と叫んだのを覚えている。
円が増価し、日本の国際的地位はみるみる向上した。1人当たりGDPで見た日米間の豊かさの差が1980年代から1990年代に縮小したのは、表1で見たとおりだ。
しかし、その後、日本の地位が下がり、日米の相対的な豊かさの比率は、1970年代末の水準に戻りつつある。
「あの時に戻るのか」という思いは、衝撃以外の何物でもない。
日本人は謙虚さを失った
日本の地位がこのように低下しているにもかかわらず、日本人はいつの頃からか、謙虚さを失った。
2005年頃、日本の1人当たりGDPのランクが落ちていると指摘すると、「自分の国を貶めるのか」といった類の批判を受けることがあった。
客観的な指標がここまで落ち込んでしまっては、さすがにそうした批判はない。それでも心情的な反発はある。
日本の経済パフォーマンスの低さを指摘すると、「自分の国のあら捜しをして楽しいのか」という批判が来る。アメリカの所得が高いと言うと、「所得分布が不公平なのを知らないのか」と言われる。つまり、外国にはこういう悪い点があるのだという反発が返ってくる。
韓国の高い成長率に学ぶ必要であるというと、「韓国は日本の支援で成長したのを知らないのか」という意見にぶつかる。
どの国にも良い点と悪い点がある。
自国の問題点を強調するのは、それを改善したいからだ。他国の良い点を指摘するのは、それが自国を改善する参考にならないかと考えるからだ。
事実を正しく認識することは、事態を変えるための第1歩だ。
そして、1960年代の謙虚さを取り戻すことが、日本再生のための不可欠の条件だと思う
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