老舗高級百貨店が店内にスケボー場を作ったワケ 今の時代「若者を惹きつける何か」が重要課題

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よく話題に上がる「クソリプ」など、今のSNSはうかうかしていると誰かと肩がぶつかるような不愉快な目に遭う場所になってしまったんですね。だから今必要とされているのは、人混みから離れたキャンプファイアができるような穏やかな場所なんです。

SNSであろうと、友人とのんびりと、安心できる時間を共有する時間が求められているのです。

実際、こうしたポスト巨大SNS時代を牽引する「デジタルキャンプファイア」に当てはまるサービスが、多数出てきています。

最も象徴的なのはDiscordでしょう。これは、もともとゲームの実況を友達だけで楽しみたいと考えた人たちが始めたサービスですが、のちにゲームユーザーだけではなく、一般的な会話を楽しむ人たちにも使われるようになり、コロナ下で爆発的にユーザー数を増やしました。

「メンタルヘルス」を検索する人に配慮

既存のSNSもさまざまな工夫を始めています。例えば、コロナになってから、多くの人たちが大手SNSのピンタレスト内で「セルフケア」とか「メンタルヘルス」に関する検索をして、リラックスできる画像を探し始めるようになっていたのですが、それにいち早く気がついたピンタレストの運営は、同様の検索をした人たち向けの特別なランディングページを用意する、という施策を行いました。

具体的には、「メンタルヘルス」をピンタレスト内で検索すると、瞑想やヨガの仕方、さまざまな心構えを紹介したコンテンツを掲載したページに飛ぶようにしたのです。

また、「メンタルヘルス」と検索をした人には「広告を見せない」という配慮も行っているようです。疲れている人たちに余計なプロモートをしないという、ピンタレストなりの「優しさ」なのかもしれません。

穏やかなコミュニティを上手につくっているブランドとしては、Blumeが挙げられます。Blumeは、思春期の女性向けの生理用品やボディケア商品などを販売しているD2Cのコミュニティ・コマースブランドです。ブランドの立ち位置を「Sisterly」としているのですが、これは「親や友人には聞きづらいこと」も、Blumeは「優しい姉」としてそれを聞くというコミュニティ戦略なんですね。今、新しいネットワーキングサービスの多くが、この「なんとなくつながって、雑談をしても許される」場所を狙ってつくられています。

さらに現在、支持されているブランドの秘密を探っていくと、文化活動を活性化することも重要だということがわかってきました。

企業が生き生きとしたコミュニティを立ち上げ、活気のあるいい雰囲気(vibes)をつくるためには、「カルチャー」が重要な要素になるのです。カルチャーサイドの人々と信頼を結ぶには時間もかかりますし、難しいこともあるのですが、今後の企業のブランド活動を考えるうえで、カルチャーはとても大事な戦略になるでしょう。

実際、レッドブルのマーケティングは、エクストリームスポーツや音楽のクラブイベントの開催に積極的なことで有名です。

あるレポートによれば、彼らはカルチャーを通して、孤独を感じている若い人たちが会話をする機会をどれだけ持ってくれるか、という点をKPIにしているそうです。認知獲得よりも、カルチャーを通して人々がつながる機会を、ブランドのモーメントにおくという戦略です。イベントの会場で誰かとしゃべった体験をレッドブルが支えているのであれば、嫌われるマーケティングにはならないはずですよね。

企業もカルチャーを媒介とすることで、初めて共感されることもあるのです。つまり「企業→顧客」ではなくて、「企業→カルチャー←ファン」という構図になります。

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